選挙がない中国の「皇帝」にトランプは勝てない!?見えてきた「ディール」の限界、「関税男は相互関税に溺れる」のか?


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「80%」の心理作戦

 このトランプのメッセージの狙いは、一体どこにあるのか。交渉の直前にトランプは具体的な数値を出して、80%までは関税引き下げの許容範囲であるというメッセージを中国側に発信した。中国側に揺さぶりをかけて、交渉の主導権をとらせないと同時に、80%は第1回目の交渉が米国側の不成功に終わった場合の弁解、即ち、ダメージコントロールの材料にもなる。

 交渉の結果はどうだったのか。米国は、80%ではなく30%まで下げた。当初から80%ではなく、30%に関税率を引き下げる用意があったのだろう。

 一方、中国側が課した125%の関税率を、米国民や市場が許容できる程度まで下げることができれば、それはトランプの成功と見られる。

 実際、交渉者ベッセントも事前に、中国との1回目の関税交渉の目的は、重大な合意よりも「deescalation」即ち、エスカレートしたものを下げることにあると述べて、具体的な数値には触れなかった。交渉結果に関する期待値を下げたのだ。

 しかし、ふたを開けてみると、米国は中国に対して115%も関税率を引き下げた。トランプとベッセントは、サプライズ作戦で、合意を「外交的勝利」としてみせた。

 この米中関税交渉から何を学ぶことができるのか。トランプとベッセントは、コミュニケーションにおけるトーンの硬軟を織り交ぜて、他国との関税交渉で、「フェイク」の数値設定や低い期待値、サプライズな結果創出等により、「勝利」を演出した。それは、今後も交渉において継続されるだろう。



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