大金をかけずに愛車の乗り心地をグッと良くする部品はこれ…新車購入後に愛車の性能を高める最も確実な方法


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 ※本稿は、鈴木ケンイチ『自動車ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■タイヤ・メーカー同士の飲み会はご法度

 3万もあるクルマの部品の中で、特別な存在となるのがタイヤです。タイヤは、寸法さえ合致すれば、どのクルマにも装着することができます。非常に汎用性の高い部品なのです。

 また、材料をはじめ製法なども特殊なため、タイヤは専門メーカーが作るものとなっています。

 その結果、タイヤのメーカーは系列サプライヤーとは一線を画した存在となり、複数の自動車メーカーにタイヤを供給しています。

 実のところ、大昔、ブリヂストンがプリンス自動車(後に日産自動車と合弁する)の経営に携わっていたことがありました。しかし、そうなると、逆にプリンス自動車以外との付き合いが難しくなるため、経営から離れたという経緯もあります。

 そして、そんなタイヤのメーカーには、他にはない、変わった業界ルールが存在します。

 それが、競合他社とのお付き合いの制限です。「別のタイヤ・メーカーの人間と飲みに行くなんてダメ」と言われているのです。

 これは、公正取引委員会対策のためのルールと言えるでしょう。

 公正取引委員会は、私たち消費者のために企業の独占を防ぎ、公正で自由な競争を守ることが仕事です。タイヤという商品は、汎用性が高いだけでなく、性能差がわかりにくいという特徴もあります。その結果、安易な価格競争に陥る可能性があると判断されがちです。

 タイヤ・メーカー同士による「カルテル」(企業同士が相談して価格を定めて競争をやめようという行為)を疑われる可能性があるのです。

 そのため、公正取引委員会に無駄に疑惑の目を向けられないために、他社の人間とは、あまり親密にならないようにという狙いがあるのです。痛くもない腹を探られないための業界ルールというわけです。

 ちなみに自動車メーカーには、そのような業界ルールはありません。クルマという製品は、それぞれの製品ごとに個性や性能が異なるため、価格を調整するカルテルがしにくいというのが理由なのでしょう。

 とはいえ、実際の近年のタイヤは、サイズの汎用性はありますが、性能そのものは、個々の差が非常に大きなものとなっています。見た目は、すべてのタイヤは黒くて丸いものですが、性能的には雲泥の差があったりするのです。

■タイヤの各種性能をモデルごとに調整

 また、狙う性能も異なり、その内容はまさに千差万別。価格だけで選ぶような製品ではありません。

 具体的に言えば、新車に装着されているタイヤは、そのほとんどが、そのモデル専用品として作られています。同じタイヤ・メーカーの同じ銘柄のタイヤであっても、Aというクルマと、Bというクルマに新車装着されるタイヤでは、中身が異なっているのです。

 どのような違いがあるのかと言えば、タイヤに備わる複数の性能のバランスが異なっているのです。

 タイヤに求められる性能は数多く存在します。耐久性にはじまり、乗り心地性能、静粛性、カーブやブレーキで発揮されるグリップ性能、燃費性能に直結する転がり抵抗、そして価格です。

 これら複数の性能の、どれを伸ばすのかがタイヤの開発となります。たとえば高級車であれば、少々価格が高くなっても、全体の性能を高めるようにします。スポーツカーなら、静粛性や乗り心地が悪くなってもいいから高いグリップ力を目指します。

 燃費を大切にするのであれば、転がり抵抗を少なくします。こうした、タイヤの各種性能をモデルごとに調整して、専用のタイヤが作られているのです。



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