米連邦下院で22日に可決したトランプ大統領肝煎りの大型減税などを盛り込んだ法案は、与党共和党の意見集約が難航し一時は早期通過が危ぶまれたが、トランプ氏自らが法案の大幅修正を求める議員たちを圧迫しながら説き伏せて面目を保った。ホワイトハウスは下院と同様に共和党上院にも早期可決を迫るが、一段の歳出削減を強硬に求める声も複数から上がり、法案審議がトランプ氏の思惑通りに進むかは見通せない。
「上院の友人たちが仕事をして可及的速やかに法案を私のデスクに送る時がきた。無駄にする時間はない」。法案の下院通過後、トランプ氏はソーシャルメディアで共和党上院に速やかな法案可決への協力を求めた。
下院では、財政規律を重視する共和党の保守強硬派がトランプ減税などの財源確保のために低所得者向け公的医療保険「メディケイド」の大幅な歳出削減を要求する一方、民主党が優勢な選挙区の議員たちは州・地方税の控除拡大を求めて調整が難航。16日の下院予算委員会では民主党に加え、身内の共和党からも反対が出て否決される事態となった。
下院で法案審議を主導するジョンソン議長(共和党)の説得により18日の再採決で承認されたが、下院の構成は共和党220議席、民主党212議席で、共和党から4人が「造反」すれば法案通過が阻まれる状態だった。トランプ氏は反対する議員を説得するために20日に連邦議会に出向くと記者団に対し、法案に反対した議員に次の選挙で「刺客」の擁立を示唆。下院共和党議員団の会合に出席して法案へのほぼ無条件の支持を要求したが、会合後も法案への反対を表明する議員が相次ぐと翌日に議員数人をホワイトハウスに招いて畳みかけるように説き伏せた。
法案が下院を通過したことで成立に向けて前進したが、上院ではさらに歳出削減に取り組むよう求める声が出ている。米政治メディア「ポリティコ」によると、ホワイトハウスは上院に対しても下院と同様に反対議員を押し切る構えだが、「財政健全化のほかに選択肢はない」(スコット議員)、「トランプ大統領は議席を維持したい下院議員に予備選で脅しをかけたが、私には通用しない」(ジョンソン議員)などとして徹底抗戦を宣言する議員もおり、審議が難航する可能性が高い。【ワシントン金寿英】