(ステラ・メディックス代表、獣医師/ジャーナリスト 星良孝)
【前編】パーキンソン病特化住宅ビジネスで急成長したサンウェルズはなぜ「闇落ち」したのか? その不正請求のカラクリ
【中編】「別表7」のうまみを最大限に生かしたサンウェルズの事業モデル、パーキンソン病を活用した不正請求の仕組み
パーキンソン病特化介護住宅を展開するサンウェルズの不正請求問題で、外部弁護士で作る特別調査委員会の調査報告書で象徴的に出てくる言葉に「真意」がある。
「真意とは……」という書き方はしていないが、「サンウェルズの役員は訪問看護の運用を本来はこう考えていたのに」という意味での真意のようだ。該当箇所を引用する。
「サンウェルズの役員は、1日3回及び複数名訪問は、あくまで標準的な方針であり、入居者の疾患の状況を踏まえ必要性が認められない場合や、入居者又はその家族の同意が得られない場合等にまで、1日3回及び複数名訪問を強いる考えは有しておらず、現に、一部の入居者に対しては、1日3回未満の訪問看護や、同行者を帯同させない形での訪問看護が実施されていた」
このように、調査報告書によれば、サンウェルズの役員やマニュアル作成者の真意によらず、看護師らは1日3回や複数人での訪問看護を行うべきだと考えたという経営陣の主張を掲載している。
ただ、現場では上長が1日3回、複数人の訪問看護を求めていた。その根拠について調査報告書では次のように記載されている。
「1日3回及び複数名訪問を求める上司等からの教育・指示の具体的な内容として、多くの看護師は、施設の開設時研修・入社時のオリエンテーション等の教育部による研修や、施設長・看護主任・副主任等による入社時の説明等を根拠として挙げている」
このように現場が経営陣の意図に反して行動していたと指摘されており、現場独自のローカルマニュアルが存在していたことなども明らかになっている。
もっとも、経営陣の「真意」が現場に広がらなかったという主張には疑問も浮かぶ。なぜなら、調査報告書では2020年度の診療報酬改定による減額要因を補うために、訪問看護の人員配置を変えたという経営会議の議論が紹介されているからだ。さらに、後述のように、社内外からの問題提起などもあったという。
仮に経営陣などの主張が事実であれば、現場判断で不正請求が可能となる。それで自然と高収益を上げられていたのであれば、医療保険制度が構造的に悪用されやすいことを示しているとも解釈できる。