闇バイトによる侵入強盗の被害が相次いでいる昨今、各家庭では防犯強化が急務だ。埼玉県警の強行犯係(殺人、強盗、放火、誘拐などを担当)として長らく勤めた筆者によれば、110番通報からパトカーの到着までは平均して8分。この時間をしのぎきり、侵入を防げば強盗被害を免れることになる。そのために実施すべき、玄関と窓の防犯対策とは?※本稿は、佐々木成三『闇バイト強盗、特殊詐欺、盗難から身を守る いますぐ防犯』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。
● 玄関の外で怪しい物音が… パトカー到着までドアは耐えられるか?
8分間の時間稼ぎをするには、実行犯が簡単に侵入できないような仕掛けをしておくことです。
さくっと侵入して、さくっと金品を奪って逃げたい実行犯は、侵入するときに時間がかかるのを最も嫌がります。現場に滞在している時間が長くなれば、それだけ捕まるリスクが高くなるからです。
実行犯に110番通報したことが伝わっていれば、時間がかかればかかるほど、あきらめて逃走する確率も高くなります。
実行犯の侵入口として考えられるのは、玄関と窓です。
戸建て住宅の90%以上が1階から侵入されていることから、特に1階まわりの防犯対策が重要になります。
まずは、玄関の仕掛けです。
ひとつは、玄関ドアのカギをCP部品に取り換えることです。
CP部品とは、警察庁や国土交通省などの官公庁と民間企業が合同で開発したもので、空き巣の常習犯でピッキング(施錠されているカギを開ける)の技術があっても簡単に開錠できず、抵抗時間が5分以上かかると確認されたものです(編集部注/CPは、Crime Preventionの頭文字)。
最近の新しい家のほとんどは、CP部品を使っていると思います。空き巣の常習犯は、カギ穴を見ただけで判別できると言います。
空き巣のプロでも簡単に開けられないのですから、素人の闇バイトに開けられるわけがありません。
玄関から入ろうとすれば、カギを破壊しようとするでしょう。それだけ時間を稼ぐことができます。必死になればなるほど焦ってくるので、その間に警察が到着してくれる可能性が高くなります。
もうひとつは、玄関のカギを2重ロックにすることです。
要するに、玄関のカギを2つにするということです。
カギが2つなら、カギを開けるのに2倍の時間がかかります。玄関からの侵入を試みる闇バイトは、おそらくカギが2つあると開錠をすぐにあきらめて、破壊することを選ぶでしょう。
2つのカギを壊すだけの時間を稼げることになります。
2重ロックにするには、業者に頼んで、ドアに工事をしてカギを追加で付けてもらうのがいちばん安全です。ただし、費用や手間もかかりますし、賃貸住宅にお住いの人は工事ができない場合もあるかもしれません。そうした場合には、南京錠のような簡易的なカギでも構いません。
それから、チェーンロックをきちんとすることも忘れないでください。それだけでも時間稼ぎの役に立ちます。
● もっとも狙われやすい窓には A3サイズの防犯フィルムを
時間がかかる玄関より窓から侵入するほうがらく。そう考えるのは自然です。玄関のドアをこじ開けるより、窓ガラスを割るほうが簡単なように思えるからです。
実際、警察庁のデータによると、2023年に発生した戸建て住宅の空き巣被害で窓から侵入された割合は55.2%、玄関などの出入口から侵入された割合は20.2%でした。
空き巣のプロではない闇バイト強盗になると、窓からの侵入がさらに多くなるのは間違いないと思います。
窓における時間稼ぎの仕掛けのひとつは、窓ガラスに保護フィルムを貼ることです。防犯対策として、すでに購入したという人もいるのではないでしょうか。
保護フィルムのメリットは、ホームセンターなどで購入でき、自分で簡単に貼れることです。しかし、「うちの窓は大きいし何枚もあるので、手軽に買えると言われても、ちょっとすぐには……」という声を聞いたことがあります。