2025年参院選は、与党・自民党と公明党に国民の怒りの鉄槌が下る歴史的大敗となった。衆院での少数与党転落に続き、参院でも議席を大幅に減らした自公政権。繰り返される「政治とカネ」の問題、世襲の横行、物価高による国民の窮乏など、積年の不満が石破茂政権を直撃した。中でも象徴的だったのは、厚労族の重鎮・武見敬三元厚労相(73)の落選だ。日本医師会の強固な支援も虚しく、彼は東京選挙区の7つの当選枠に食い込めず、苦杯をなめた。
厚労族の重鎮・武見敬三氏の落選とその背景
武見氏の落選は、与党の歴史的大敗の中でも特に国民の不満を象徴する出来事として注目された。開票センターとなった東京都医師会館には、その敗北を予感させるような沈鬱なムードが漂っていた。
武見敬三氏落選に沈む、東京都医師会館の開票センターの様子
選挙戦最後の演説となった19日のJR蒲田駅前で、武見氏は選挙カーの上から「自分の意見を一方的に、ただただポピュリズムで、減税減税の一辺倒で、その社会保障の財源をどうするのか。若い人たちを支援する子育て支援の財源をどうするのか。こうした議論を発することなく、ただただひたすらにポピュリズムで、手取りを増やせ。減税減税だ、保険料を返せと、これでは国の責任は成り立ちません!」と声を張り上げた。「なんとしても私は議席を確保しなければなりません」と聴衆に訴えかける姿には悲壮感すら漂った。この日まで情勢調査で劣勢が伝えられていたからだ。
2025年参院選で社会保障政策について演説する武見敬三氏
武見氏は、開業医の業界団体である日本医師会の会長を務めた「喧嘩太郎」の異名を持つ武見太郎氏を父に持つ。父・太郎氏が医師会、薬剤師会、歯科医師会を含めた「三師会」に強い影響力を有した威光を背景に、武見敬三氏は当選5回を重ねてきた。麻生太郎元首相を親族に持ち、岸田文雄政権下では厚生労働大臣も務めるなど、輝かしい政治家としてのキャリアを持つ一方で、今回の選挙では極めて厳しい戦いを強いられていた。
「世襲」「既得権益」への批判:若年層の視点
全国紙政治部記者は、武見氏について「血筋も良く、政治家としてのキャリアもある一方で、批判を受けやすいプロフィールの持ち主でもあった」と指摘する。70歳を過ぎた高齢であること、日本医師会からの組織的なバックアップ、そして世襲議員である点が、特に若い世代からは「利権にガチガチな典型的なロートル議員」と映ったという。案の定、今回の選挙は自公政権への強い逆風をもろに食らい、序盤から厳しい戦いとなっていた。
政権幹部の応援も空しく:有権者の厳しい審判
選挙戦最終日、石破首相をはじめ木原誠二選対委員長ら党幹部が崖っぷちの武見氏の応援に駆けつけ、壇上から支援を訴えた。木原氏は敗北への危機感から、かつての民主党政権を批判しつつ、アベノミクス、スガノミクス、岸田政権の取り組みと、自公の実績を強調した。しかし、いまいち浸透していない「スガノミクス」というフレーズは聴衆の戸惑いを誘い、上滑り感が否めなかった。石破首相は「この国の社会保障は武見敬三なくして語れない」と持ち上げたものの、武見氏が奇跡の巻き返しを果たすことはなかった。
結論
2025年参院選での自民公明両党の歴史的大敗は、「政治とカネ」、世襲、物価高への国民の積年の不満が噴出した結果である。厚労族の重鎮・武見敬三氏の落選は、旧来型政治への強い拒否反応を象徴する。この結果は、有権者が透明性高く、国民生活に寄り添った新しい政治を求めている明確なメッセージであり、今後の日本政治に大きな影響を与えるだろう。