【北京=三塚聖平】中国の肖千駐オーストラリア大使は27日までに、中国企業が権益を持つ豪北部ダーウィン港の賃借契約を見直す方針をアルバニージー豪首相が打ち出したことに対し、「道義上、妥当でない」と反発した。米投資会社による買収計画も浮上しており、中豪関係にも影響を与える可能性が高まっている。
在豪中国大使館は25日、肖氏が中豪メディアの取材を受けた際のものとする談話をホームページに掲載した。肖氏は、中国企業が10年前に結んだダーウィン港に関する契約が「豪州の法律と市場ルールに完全に合致している」と指摘。この間に多額の投資も行って黒字化を果たしており、「処罰されるのではなく奨励されるべきだ」と訴えた。肖氏は、外交ルートを通じて豪政府などと意思疎通していることを明らかにした。
ダーウィン港をめぐっては、中国企業「嵐橋集団」が2015年に北部準州と約5億豪ドル(約460億円)で99年間賃借する契約を結んだ。同社は中国政府と深い関係にあり、同港は戦略的な要衝であるため安全保障上の問題が豪州内で懸念されてきた。アルバニージー氏は今年4月、同港の契約見直しへ政府が介入する姿勢も示した。
そうした中、豪紙オーストラリアン(電子版)は26日、米投資会社サーベラス・キャピタル・マネジメントが、ダーウィン港について嵐橋集団に正式な買収提案を行うことを準備中だと報じた。これに対し、中国外務省の毛寧報道官は27日の記者会見で、嵐橋集団はあくまで市場を通じて契約を結んでおり、「合法的な権益は十分に保護されるべきだ」と発言。アルバニージー政権に対し、中国企業を不当に扱わないようクギを刺した形だ。
中豪関係は、20年にモリソン豪政権(当時)が新型コロナウイルスについて発生源の第三者による調査を求めたことなどに中国が反発して悪化。22年のアルバニージー労働党政権への交代を機に関係改善が進んでいたが、ダーウィン港に関する問題次第で再び緊張が増すこともありそうだ。