仕事のできる人が「朝30秒のゴミ出しができない」のはなぜか


● 5〜6月は、片づけやゴミ出しが滞りやすい

 新年度が始まって1ヵ月が過ぎ、大型連休が明けて仕事のリズムを取り戻しつつあるこの時期、「部屋が片づかない」「なんとなく疲れが抜けない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

 仕事や学校などの日常生活に慣れてきた一方で、片づけやゴミ出しといった“生活のメンテナンス”が、ふとしたタイミングで滞り始めるのも、この時期の特徴です。

 象徴的なのが、朝のゴミ出しです。
すでに口を結んであるゴミ袋を、通勤・通学の途中にある「決められた集積所」に持っていくだけ。

 たったそれだけのことなのに、家族から「これ出しておいてくれる?」と頼まれて、
「ごめん、時間ないからムリ」
と反射的に断ってしまった――そんな経験、ありませんか?

 あるいは、ひとり暮らしで「明日はゴミの日」と、家中のゴミを集めて大きな袋にまとめて「捨てるだけ」の状態にしていたのに、翌朝になって「今日は間に合わないからパス!」と、ゴミ袋を部屋の中に置いたまま、バタバタと家を出てしまった……。

 そして、帰宅して玄関に置きっぱなしのゴミ袋を見て、「ああ、出せばよかった……」と後悔する。

 僕自身、何度もあります。

● 朝の30秒でさえ「時間ないからムリ」となる理由

 もちろん、朝は忙しい。身支度をして、メールをチェックして、電車の時間も気にしなければならない。

 ギリギリで家を出ることになれば、ゴミ出しにかける30秒すら「無理」と感じてしまいます。

 でも、実のところ――本当に足りないのは時間ではなく、心の余裕なのです。

 出社時間に間に合わないからではなく、頭の中が仕事のことでいっぱいで、「今はそれどころじゃない」と感じてしまっている。

 つまり、「仕事以外のことを考えている暇はない」という感覚が、無意識のうちに行動を支配している。

 つまり、人生の優先順位が、いつの間にか「仕事」が最上位になってしまっているのです。

 その結果、「家のこと(家族のこと)」も、「自分のこと(生活や健康)」も、後回しにされてしまう。

 だからこそ、たった30秒のゴミ出しですら、“優先順位の外”に追いやられてしまうのです。

● ゴミ出しができないのは、「責任感がある」証拠

 もうひとつ、ゴミ出しが滞る大きな理由があります。

 それは、「ちゃんとやらなきゃ」「ルールを守らなければいけない」という気持ちが強すぎることです。多くの依頼者さんが同じような悩みを打ち明けてくださいました。

 ゴミの分別ルールが厳格化し、出せる曜日や時間帯が限られている中で、「間違って出して近所に迷惑をかけたらどうしよう」と思ってしまう方がとても多いのです。

 特に真面目で責任感の強い人ほど、「完璧にやれないならやらないほうがマシ」と感じてしまい、ゴミ出しという小さなタスクにすら手をつけられなくなる――これは決して珍しいことではありません。

● 「出しやすい環境」を整えるという発想も

 この問題の根本的な解決策として、僕はこんなふうに提案することがあります。
「無理なくゴミが出せる環境に住むことを、住まい選びの条件にしてください」と。

 たとえば、24時間いつでもゴミ出しができるマンションであれば、朝の忙しさに追われることなく、夜帰ってきたときでも落ち着いてゴミを出すことができます。

 特に仕事が忙しい方にとっては、「ゴミ出しのしやすさ」は間取りや駅からの距離以上にこだわっていただきたい、家選びの大事なポイントです。

 すぐに引っ越すことは難しいかもしれません。

 ですが、次の更新や転居のタイミングで「ゴミ出しのしやすさ」を基準に入れてみるだけで、生活の整いやすさは大きく変わってきます。

● 朝の30秒が、暮らしを立て直す第一歩になる

 朝の30秒が、暮らしを立て直す第一歩になる
片づけは、「一気にやるもの」ではありません。
大事なのは、「今日できることを、小さくやる」ことです。

 まずは、朝の30秒だけ。
出しそびれていたゴミ袋をひとつ、玄関まで運ぶ。あるいは出勤前に集積所へ持っていく。

 それだけで、少しずつ、自分の生活を取り戻していくことができるはずです。

 そして、そのたった30秒ができるようになったときこそ、あなたの「心に余裕が戻ってきた証拠」でもあります。

 真面目で仕事ができる方、責任感の強い方ほど、自分のことは後回しにしがちです。

 そして、心に余裕がなくなればなくなるほど、生活の小さなメンテナンスがおろそかになります。

 だからこそ、朝30秒のゴミ出しを、自分のバロメーターにしていただきたいのです。

 「今日はゴミ出しができた」
その感覚は、生活を整える力が戻ってきたサイン。

 自信を持って、その一歩を積み重ねていってください。

 そしてそれは、暮らしを整えるための“片づけの習慣”を取り戻す、最初の一歩でもあるのです

二見文直



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