「ドナルド」「シゲル」と呼び合う日は来ない…「外交オンチ」石破首相が気付いていない、日米関係の冷酷な現実


【写真を見る】安倍晋三元首相とトランプ米大統領=2016年11月18日、ニューヨーク市マンハッタン

 ※本稿は、山上信吾『国家衰退を招いた日本外交の闇』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

■石破首相の鈍感力は目に余る

 岸田文雄前総理と石破茂総理。共通項は何か?

 総理の座へのあくなき執着心と鈍感力ではないだろうか。

 石破政権発足以来の外交・安全保障政策の展開を興味深く観察してきた。自民党総裁選での目玉は、アジア版NATO創設と日米地位協定の見直し・改定だった。世論の強い反発を受け、政権が発足し責任ある地位に就いてからは、意図的に封印してきたようだ。

 昨年秋の国会での所信表明演説でも、これらの目玉政策については何ら言及がなされなかった。本年2月の日米首脳共同声明にも何ら言及がない。冷静に考えれば当然だろう。

 アジア版NATOなど、国際関係論を学びつつある大学1年生でも無理筋と分かる話だ。参加国の間に(1)共通の目的、(2)共通の脅威認識、(3)共通の行動をとる覚悟がない限り、このような集団的自衛の枠組みは絵に描いた餅に終わるからだ。

 子細に見てみよう。

■アジア版NATOなど夢のまた夢

 欧米と違い、アジアには民主主義、人権尊重、法の支配といった基本的価値さえ完全に共有されていない現状がある。すなわち、自由民主主義を旧ソ連の共産主義やロシアの権威主義体制から守ろうとしてきた欧州・北米版NATOとは実情が全く異なるのだ。

 脅威認識についていえば、旧ソ連、ロシアを共通の脅威と認識してきた欧州諸国、アメリカ、カナダとはアジアは異なる。中国を脅威とみなすことには、東南アジア諸国はもちろん、豪州のような国でも異論を提起する向きが絶えない。その中国自体のアジア版NATO参加を排除していないことに照らせば、石破総理自らが脅威認識において揺らいでいるのかもしれない。

 ましてや、憲法第9条の制約からフルスペックの集団的自衛権を行使できない日本が集団的自衛権発動の枠組みを提案するなど、他国から見れば噴飯物だ。日本自身が共通の行動をとれないからだ。

 「中国に侵略されるフィリピン、北朝鮮に侵略される韓国を日本は助けるんですね?」と念押しされた場合、石破総理は何と答えるのだろうか? まずは憲法を改正しないと日本自身が参加できない話なのだ。



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