連載《ニュースなルック》
久しぶりに、本当に久しぶりに地上波の民放のテレビで毎週欠かさず見たいと思うホームドラマである。岡田恵和氏脚本、中井貴一氏と小泉今日子さんダブル主演の「続・続・最後から二番目の恋」(フジテレビ系)だ。昭和の正しいホームドラマを見てきた世代だけじゃなく、いつもはテレビドラマをあまり見ない今どきの若い世代からも「何であんなに面白いんですか?」とよく聞かれる。こりゃあ人気は本物である。
【写真をチェック】ドラマで息の合った掛け合いをみせる吉野千明役の小泉今日子さんとの2ショットや一人空を見上げる「長倉和平」の姿はこちら
ドラマの舞台は神奈川県鎌倉市。鎌倉市役所に勤める長倉和平は妻に先立たれて、一人娘と兄妹たちと一緒にカフェを併設した古民家で暮らしている。そんな長倉家のお隣に、数々のヒットドラマを手掛けた独身のベテランテレビプロデューサー・吉野千明が引っ越して来る。ざっくばらんな性格の吉野千明と、真面目を絵に描いたような長倉和平。人生も後半戦に入った2人の友情以上恋愛未満な大人の男女の関係を中心に、それぞれが仕事に人生に悩みを抱える個性的な長倉家の兄妹たちが繰り広げる、ちょっと切なくてクスっと笑えて温かくなる恋愛青春コメディーホームドラマだ。
2012年1月放送開始の「最後から二番目の恋」から始まり、大まかな設定は変わらずに登場人物たちがドラマとともに年齢を重ねながら、これまでにスペシャル版の「最後から二番目の恋2012秋」、2014年に「続・最後から二番目の恋」が放映されている。
■小泉今日子と絶妙な男女の掛け合い
何といってもこのシリーズの人気の秘密は、主人公の長倉和平を演じる中井貴一氏と、吉野千明を演じる小泉今日子さんのキャラにある。まるでアドリブとも思える2人の息が合った大人の男女の掛け合いシーンは、ドラマの一番の見どころでもある。互いに毒舌を吐きつつも、絶妙な信頼感が見える軽妙かつ深いセリフの言い争いは、「千明と和平の掛け合い、めっちゃ面白い! ずっと聞いていたいよ」、「キョンキョンと貴一さんのケミ(相性)、完璧すぎる!」、「あのバチバチな会話、最高! 漫才師みたいで笑いが止まらない」などなど、SNS上で毎回話題になる。
「続・続・最後から二番目の恋」の長倉和平の困り顔演技は、まさに役者、中井貴一氏の名人芸と言ってもいい。これについては前々作の「最後から二番目の恋」が放映された時に、コラムニストでテレビドラマに詳しい自称「中井貴一研究所の所長」ことペリー荻野氏と対談したことがある。ペリー荻野氏いわく、中井貴一氏には「A(エー)貴一」と「O(オー)貴一」があるのだそうだ。
A貴一とは「アクション貴一」のことで、シリアスな役柄でアクションシーンもこなす中井貴一氏。NHK大河ドラマ「武田信玄」や「平清盛」の中井貴一氏、映画「亡国のイージス」や「四十七人の刺客」の中井貴一氏、NHKのBS時代劇「雲霧仁左衛門」の中井貴一氏などがそうだ。一方、O貴一とは「オロオロ貴一」のことで、困り顔でオロオロしてしまう演技をする中井貴一氏。ドラマ「ふぞろいの林檎たち」などがそうだ。
O貴一の代表作と言えば、ドラマ「Age,35 恋しくて」の中井貴一氏だろう。「続・続・最後から二番目の恋」の長倉和平の困り顔演技も、まさにO貴一の真骨頂である。このコラムでよく述べるが、役者はコメディーな演技がうまいほど名優と言える。A貴一とO貴一。役柄や出演作で自在に使い分ける中井貴一氏は、まぎれもなく令和を代表する名優だ。