中国で民主化運動が武力弾圧された天安門事件が起きた6月4日を前に、毎年追悼集会が開かれていた香港中心部のビクトリア公園に天安門と似た「門」が現れた。親中派団体が物産展の出入り口として完成させる前の段階で、天安門に似せる意図があったかどうかは不明だが、SNS上では香港政府に批判的な人たちの間で話題になっている。
公園では2020年の国家安全維持法(国安法)施行まで、例年大規模な追悼集会が行われてきたが、法施行後は当局の封じ込めにより開催できなくなった。23年以降は親中派団体が中国の特産品を販売する物産展を開き、追悼ムードを打ち消している。
今年も6月1日から始まる物産展の準備が進む中、会場入り口に5月下旬、赤い「門」が姿を見せた。設営途中で装飾前の段階とみられるが、SNSには「門」の写真と共に「『天安門』が現れた」と投稿された。香港政府に批判的な投稿者とみられる。
「本来は黄色の大屋根まで赤く塗られている」「この時期にビクトリア公園で『血に染まった』光景がみられることは、象徴的な意味を持つ」と発信したのに対し、投稿者に共感する人から「64(天安門事件の発生日)を忘れない」といった反応が寄せられている。
5月31日には「門」の上にパンダの飾りが乗り、物産展の名称が掲げられるなど装飾が進んでおり、「天安門」の姿からは遠ざかっていた。一時的でも集会阻止を目的とする催事の準備中に「天安門」が現れ、民主化運動の記憶を呼び覚ましたことから、「主催者に感謝する」と皮肉るコメントも投稿された。(香港支局 遠藤信葉)