兵庫県の井ノ本知明総務部長(当時)が、斎藤知事の疑惑を告発した元県民局長の“私的情報”を漏洩した問題で、県は「知事が漏洩を指示した可能性が高い」ことを理由に、井ノ本氏の懲戒処分を軽減していたことが分かりました。
【動画で解説】「私的情報」漏洩問題で食い違う主張 斎藤知事「指示はしていない」誰がなぜ 刑事告訴の可能性は?
斎藤知事は、この軽減された処分を決裁した一方、「漏洩の指示はなかった」としていて、知事の主張に重大な矛盾が生じています。第三者委員会の調査報告書から見えてきた情報漏洩の裏側と、知事の主張による矛盾、県議会の動向について解説します。
■複数証言から第三者委「知事の指示による可能性高い」認定も…
公務員が職務上知り得た秘密を漏らすことは地方公務員法に違反する行為ですが、第三者委の調査で「斎藤知事及び片山元副知事の指示のもとに行われた可能性が高い」と結論づけられるような情報漏洩は、なぜ起きてしまったのでしょうか。
まず、井ノ本総務部長(当時)は、第三者委の調査に対し「別の幹部職員も同席する場で、斎藤知事から『そのような文書があることを、議員に情報共有しといたら』と指示された」と説明しました。
第三者委が、この「同席した幹部職員」にも話を聞いたところ、『その私的情報があったということも含めて、根回しというか、議会の執行部に知らせておいたらいいんじゃないかという趣旨の発言があった』と証言し、井ノ本氏の説明が裏付けられた形となりました。
さらに片山副知事(当時)も、この幹部職員から報告を受けていたということです。片山氏は第三者委の調査に対し「『知事から井ノ本氏に、元県民局長の私的情報について議会と情報共有しておくようにとの指示があった』と聞いたので、特に反対もせず、井ノ本氏において根回しをするように指示した」と語っています。
第三者委は、井ノ本氏が県議会議員3人に元県民局長の私的情報を漏洩したと認定。その上で、井ノ本氏、同席した幹部職員、そして片山氏の証言が一致していることから、情報漏洩は「斎藤知事と片山元副知事の指示による可能性が高い」としました。
私的な情報が流出する中、元県民局長は百条委員会に対し「プライバシーへの配慮」を要請しましたが、その後、自ら命を絶ちました。
斎藤知事は「組織の長」としての責任を取る形での給与カットなどの意向を示してはいるものの、「指示はしていない」と全面的に否定。28日の会見では「私自身は漏洩の指示をしていないという認識に変わりはない。情報管理をしっかりしておくように指摘すべきだった」と語っています。