【国際情勢分析】「台湾は中華民国」か 総統選の隠れた争点





17日、台北での選挙集会で、来年1月の総統選での再選に向けて気勢を上げる民進党の蔡英文総統(スクリーン左)と、副総統候補の頼清徳氏(同右)=AP

 台湾で来年1月に行われる総統選で再選を目指す与党、民主進歩党の蔡英文(さい・えいぶん)総統が、これまで口にすることを避けてきた「中華民国」という台湾当局の公称に言及する場面が増えている。蔡氏が「中華民国」という名称を避けてきたのは、民進党の伝統的な支持層である「台湾独立」派に、蒋介石政権による弾圧の記憶が根強い「中華民国」体制への反感があるためだ。それがここにきて中間層や野党、中国国民党の支持層をも念頭にウイングを広げる戦術に転換。支持者の切り崩しを警戒する国民党の韓国瑜(かん・こくゆ)高雄市長は、激しく反発している。

■「中華民国台湾」

 「2300万人が台湾でともに暮らし、主権があり政府があり、民主的で自由な(政治・社会)制度があり、自国を自ら防衛し、外交がある。これが私のいう中華民国台湾だ」

 蔡氏は18日、選管への立候補を届け出た後、記者団の質問にこう答えた。

 背景には、蔡氏が副総統候補に「台湾独立」派の頼清徳(らい・せいとく)氏を指名したことで、国民党側から「台湾独立を容認するのか」との批判を受けていたとの事情がある。頼氏が「台湾はすでに独立主権国家であり、名称は中華民国だ。独立宣言は必要ない」と述べたの対して韓氏が「詐欺だ」と批判したことへの反論だった。

 国民党が、民進党の政治家の「中華民国」発言を攻撃するのは、よくある光景ではある。民進党支持者の中には国民党の党章をあしらった「国旗」や、もともとは同党の党歌だった「国歌」を認めない人も多い。蔡氏自身も、支持層に配慮して「国歌」を歌うことを回避してきた節がある。

 ところが、蔡氏は今年10月10日の「建国記念日」に相当する「双十節」の演説で「中華民国」に何度も言及した。韓氏はこの日、蔡氏が就任後、「中華民国」というべきところを「この国」としか呼ばないとして、「中華民国を矮小化(わいしょうか)している」と批判しており、タッチの差で攻撃をかわした形だ。

■中台分断の名残り

 「中華民国」に対する両党の立場の違いは、台湾の現代史に由来する。

続きを読む



Source link