香港メディアのサウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)は7月29日、中国の最新鋭ステルス戦闘機J-20が先日、対馬海峡を通過したものの、韓国および日本がこれを探知できなかった可能性を報じ、地域安全保障に波紋を広げています。この報道が事実であれば、中国のステルス技術が高度なレベルに達し、実質的な脅威として認識されることになります。軍事アナリストの一部は、J-20のステルス機能が非常に高い水準に達しているとの見方を示しています。
中国ステルス戦闘機J-20の「未探知」報道と軍事的示唆
SCMPの報道は、中国軍戦闘機が韓国の防空識別圏(KADIZ)内でレーダーに捕捉されなかったと示唆しています。作戦半径が2000キロとされるJ-20が空中給油なしで対馬海峡東水路を往復飛行するためには、離於島周辺のKADIZを通過する必要があり、もし実際に飛行していたとすれば、韓国の監視システムがこれを捕捉できなかったことになります。これは、J-20のステルス性能が韓国の防空網を突破する能力を持っている可能性を示唆しています。
日韓の防空識別圏と監視体制の課題
日本もここ数日の間、対馬海峡などに設定している日本の防空識別圏内で中国軍戦闘機を捕捉したという発表はありません。韓国軍関係者によると、通常、他国の軍用機が事前の通知なしに防空識別圏に侵入すれば、警戒のためのスクランブル(緊急発進)が行われますが、日本側も今回はスクランブルしなかったようです。防衛省は通常、中国やロシアの軍用機が防空識別圏に侵入した場合には発表を行ってきましたが、最近これに関する発表はありません。
中国の最新鋭ステルス戦闘機J-20が飛行する様子。対馬海峡上空の未探知通過が報じられ、日韓の防空能力への懸念が高まっている。
中国の軍事力強化と地域安全保障への影響
中国は今年に入って西海で空母艦隊の訓練を実施するなど、その影響力を拡大しています。さらに、J-20を今年中に400機にまで増やす計画も進められていると報じられており、これは周辺国にとって看過できない動きです。現在、韓国軍の第5世代戦闘機F-35は39機にとどまり、今後20機を追加導入する予定ですが、数の面ではJ-20の計画機数と大きく差をつけられています。この軍事バランスの変化は、韓国、米国、日本にとって緊張を強いられる状況をもたらしています。
報道内容の評価と提起される疑問点
ただし、SCMPの報道には誇張が含まれている可能性も指摘されています。このニュースは、中国中央電視台(CCTV)の「第1航空旅団がバシー海峡と対馬海峡上空の飛行に成功した」という報道と同時に公開されたJ-20の飛行動画に基づいて推定された内容です。また、SCMPが「韓国や日本のTHAAD(高高度防衛ミサイル)でもJ-20を探知できなかった」と伝えた点についても疑問符がついています。在韓米軍のTHAAD砲台は北朝鮮の核・ミサイルに対抗するため北向きに配備されており、離於島周辺を探知範囲としているわけではないため、THAADがJ-20を探知しなかったからといって、そのステルス性能が証明されるわけではありません。
今回のJ-20戦闘機に関する報道は、その真偽の如何にかかわらず、中国の軍事力増強と地域における安全保障上の懸念を改めて浮き彫りにしました。日韓両国の防空・監視能力と、今後の情報公開や各国の対応が注目されます。
参考文献
- 中国の最新鋭ステルス戦闘機J20、対馬海峡を通過も韓日「探知できなかった」報道 – Yahoo!ニュース / 朝鮮日報日本語版
- 【写真】中国の最新鋭ステルス戦闘機J20 – 朝鮮日報日本語版