「最初に備蓄米を買ったのはなんだったのだ、と」
石破茂首相(68)が政権浮揚の切り札に登板させた小泉進次郎農水相(44)。就任して間もなく、随意契約による備蓄米放出がテレビでは評判で上々な滑り出しに見える。だが、現場に目を向けると「江藤米」の弊害など問題が山積しているのだ。
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埼玉の米穀専門輸送業「G.R.TRANS」代表の山際満氏は、今回の備蓄米の配送が本格化するのは6月下旬になるとみるが、こんな不安があるという。
「前回までに入札された備蓄米のうち(3月分の)計21万トンが今さらになって、世に出始めているんです。今回の備蓄米と前回分の配送が重なって、目詰まりしないか心配です」
この点、さる老舗米問屋もこう語る。
「3月の2回目の入札時に20トン備蓄米を注文したのですが、5月中に届く予定が延びて、6月に入ってからようやく届くことになりました。われわれは江藤(拓・前農水相)さん時代に放出された備蓄米を、随意契約の価格よりも1俵1万円以上高く買っています。最初に備蓄米を買ったのはなんだったのだ、と思います」
同じ備蓄米でも「江藤米」は5キロ3000円台、「進次郎米」は約2000円と、値付けに1000円以上の差が出る見込みだ。せめて、「江藤米」さえ予定通りに搬送されていれば今般の逼迫(ひっぱく)した状況に至らなかったはずである。
「小泉さんは何を言っているんですかね」
山際氏が苦言を呈する。
「そもそも、物流がうまくいっていたら3月の政府の21万トンもとっくに配り切っていたはずです。なのに、今度のヤツも“早く売って”と催促するだけ。小泉さんは、何を言っているんですかね。どこかで血管が詰まっているから、血流が止まっちゃっているんじゃないですかって話です」
さらに、現場ではこんな問題も。
「今、配送業者でコメを扱えるところがすごく少ない。玄米は1袋30キロ。コメをトラックの荷台からバラで(手作業で)下ろす重労働に耐えられる運転手さんがいないんです。フレコン(大容量の袋)やパレット(荷役台の板)で搬送して、フォークリフトで荷下ろしすれば運転手の負担は減りますよ。でも、狭い荷下ろし場所ではフォークリフトは使えませんし、パレットを持ち出せない倉庫や精米工場が大半なんです」(同)