5月中旬から北海道で震度4を観測する地震が相次いでいる。巨大地震の前兆なのか――。地震学が専門の北海道大地震火山研究観測センターの高橋浩晃教授(54)に聞いた。
――浦河町や釧路・根室市などで、約半月の間に震度4の揺れが計5回発生しています。
◆北海道の太平洋側は全国的に見ても地震活動が活発な地域で、今回のように震度4の地震がある程度(時期的に)固まって発生することは珍しいことではありません。それほど心配する必要はないです。
――発生要因は。
◆十勝・根室沖では太平洋プレートが北海道の下(北米プレート)に沈み込んでいます。この沈み込みに伴って地震活動が起きます。
――巨大地震に発展する可能性は。
◆巨大地震との関係は分かりません。ただ、太平洋側ではもともと、地震の規模を示すマグニチュード(M)9クラスの超巨大地震の発生が「切迫している」と国に評価されています。
つまり、東日本大震災(M9・0)級の地震がいつ起こってもおかしくない。今回の地震が、周辺にためられた地震エネルギーを解消したかというと、ほとんど解消していません。巨大地震のリスクはずっと続いています。
――北海道で起こる地震には、主にどんなタイプがありますか。
◆太平洋側では、今回のように千島海溝沿いの領域でプレートの沈み込みによる地震が発生します。
日本海側では、強い揺れと津波で大きな被害が出ることが多い。典型的なのが、奥尻島を襲った1993年の北海道南西沖地震(M7・8)。昨年の能登半島沖地震(M7・6)と同じタイプの地震でした。
さらに、札幌や、石狩、空知、胆振にかけての地域では、地下に活断層が存在していることが分かっています。このため、内陸で直下型の非常に強い揺れが生じる可能性もあります。
――札幌で直下型大地震が起きたら、どうなりますか。
◆市の想定によると、最大で震度7の揺れ、死者数約4900人の被害が出るとされています。液状化の痕跡や資料などから、過去にも震度6以上の強い揺れが何回も発生していたことが判明しています。
――北海道で起きた主な大地震として、2003年に震度6弱を観測した十勝沖地震(M8・0)や、道内で初めて震度7を記録した18年の北海道胆振東部地震(M6・7)があります。それぞれ前兆はありましたか。
◆ありません。基本的に地震はほとんど前兆がなく起こります。地震は予知できないと、国も正式にコメントしています。地震は突然起こるため、事前に十分な対策をしてください。
――今後も道内で震度4レベルの地震は続きますか。
◆1週間程度は、体で感じる地震が続く可能性があります。それ以降の見通しは難しいですが、今回と同じような場所で地震が頻発するようなことになれば、注意が必要です。気象庁が発表する情報をまめに確認するようにしてください。
――今、備えるべきことは。
◆地震は突然起きます。まずは家具をきちんと固定し、屋内の安全を確保してください。沿岸部では津波の恐れがあるため、避難経路を確認してください。大災害が起きると物流が滞ります。水や食料など1週間分の備蓄があると安心です。【聞き手・伊藤遥】