美容整形は、明らかに普及しているにもかかわらず、富裕層や著名人の間では長らくタブーとされてきた。施術について公に語るごく少数のスターたちは大抵、激しく飛び交う臆測や外見の変化を問いただされるプレッシャーに屈している。それでも、セレブは、侵襲性の低い施術について共有したり(アリアナ・グランデは唇にフィラーを入れ、ボトックスをしていたことを認めている)、医学的な正当性を主張したり(ザック・エフロンはあごのラインが変わったことについてけがが原因だったと語った)、あるいは後悔をにじませながら自身の判断について断りを入れたり(ベラ・ハディッドは「元の鼻のままにしておけばよかった」と吐露した)することは多々ある。しかし、リアリティ番組「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」に出演する実業家カイリー・ジェンナーが今週、自身の豊胸手術についてTikTokで詳細を明かしたことは、その率直さとあっけらかんとした調子で多くのファンを驚かせた。
美容整形についての公表が話題となっているカイリー・ジェンナー。2024年10月28日、CFDAアワードに出席した際の様子。
カイリーの「驚くほど詳細な」公表内容
コンテンツクリエーターのレイチェル・リーリーから「豊胸手術を受けた時、何をお願いしたのか、興味を持っている私たちにどうか教えて」という直接のリクエストを受け、ジェンナーは予想外にも手術の詳細を明らかにした。彼女はインプラントの正確なサイズや種類、位置、さらには担当したビバリーヒルズの外科医の名前すら明記した。具体的には、「445cc、中くらいのボリューム、半分は筋肉の下に!!!!!シリコン!!!ガース・フィッシャー!!!役に立つといいな(笑)」と書き込んだのだ。このコメントは後に削除されたが、その内容は瞬く間に拡散した。
公開への反応と批判、そして健康リスク
ジェンナーの異例なまでの率直さは、SNS上でだけでなく、複数のファッション誌からも称賛された。ハーパーズ バザー誌はこれを「整形手術の透明性における新時代」と呼び、同誌の美容ディレクターは、セレブが秘密主義を貫くことで「評判の良い信頼できる美容外科医の名前を隠蔽している」と指摘し、透明性の価値を強調した。実際、他の多くのセレブも施術内容や医師の名前を公表する傾向にある。ケリー・リパはボトックス注射を受けながら皮膚科医の名前を叫び、エイミー・シューマーは産後の脂肪吸引手術を執刀した医師に感謝を伝えている。
良くも悪くも、ジェンナーの率直な公表は、美容整形という長年のタブーをさらに打ち砕いた。しかし、一方で批判もあがっている。こうした公表が、病気や感染症、さらにはリンパ腫の一種であるBIA-ALCLとの関連性も指摘される侵襲的な手術を軽々しく推奨していると受け止められる懸念があるためだ。実際、米国では豊胸手術が増加傾向にあり、2000年の21万2500件から2023年には30万件以上に達している。同時に、豊胸インプラントの除去手術も増加しており、2023年だけで9%増加しているというデータも、施術にはリスクが伴うことを示唆している。
過去の後悔と専門家の見解:美の基準と資本主義
興味深いことに、ジェンナー自身は以前、豊胸インプラント手術を受けたことを後悔していると明かしている。2023年に出演したカーダシアン家のエピソードでは、「私の胸は美しかった。まさにゴージャス。完璧なサイズで、すべてが完璧だった」と述べ、18年の出産前に受けた豊胸手術について「どう考えても、最初から受けなければよかったと思っている」と語っていた。この過去の発言を踏まえると、今回の詳細な公表はさらに複雑な意味合いを持つ。
米公共ラジオNPRの元韓国支局長で、身体改造に関する著書もあるエリース・ヒュー氏は、ジェンナーの最近の公表は「身体改造がいかに当たり前のものになったか」を反映していると分析する。「現代において、身体改造についてオープンに話すことは、私にとって全く理にかなっている。なぜなら、見た目の良さは社会的・経済的資本につながるという、より大きな文化の一部であり、『努力する』とは、従来の規範に合うように外見を変えるべく努力することを意味すると理解しているからだ」とヒュー氏は述べる。
しかし、ヒュー氏は同時に懸念も示す。ジェンナーの透明性が、非現実的で、多くの女性にとって手の届かない美の基準を強化することになるかもしれないという点だ。「美の強制は被害者を伴う」とし、「外見を自分の価値として内面化するよう教え込まれ、ハイパー資本主義においては、特定の医師に診てもらったり、シリコンを購入したりすることで、外見を選択と資源の問題として位置づけてしまう。お金があれば私たちが(誤って)価値と同一視している外見を買うことができると考えるようになる」とヒュー氏は警鐘を鳴らす。さらに、「胸がぴったりでなかったり、どうにも『フィット』しない体型を問題視することにもなる」とし、「豊胸手術の『方法』を教えるカイリーは、美容業界が、私たちの体について作り出した問題を『解決』するための市場を作り出す方法の一部なのだ」と、美容産業と美の基準の問題点を関連付けて締めくくった。
カイリー・ジェンナーの豊胸手術に関する異例の公表は、セレブが美容整形について語る上での長年のタブーを打ち破る動きであると同時に、現代社会における美の基準、身体改造の普及、そしてそれが資本主義経済の中でどのように位置づけられているのかという、より深い社会的な問いを投げかけている。その透明性が、美容整形をより身近な選択肢として提示することで、特に若い世代に影響を与え、達成困難な美の理想を追求することにつながるのではないかという懸念も示されており、今後の議論が注目される。