自民党、参院選東京選挙区候補に鈴木大地氏を擁立へ:森元首相との関係に懸念

夏の参院選が迫る中、逆風を受ける自民党は、東京都選挙区の候補者選考に難航を極めていた。こうした状況下、日本水泳連盟会長を務める元オリンピック金メダリスト、鈴木大地氏(58)に白羽の矢が立った。知名度のあるスポーツ界の重鎮である鈴木氏の擁立は、窮地の自民党にとって「困った時の神頼み」とも映る。しかし、彼の政界進出には、かつて「神の国発言」で物議を醸した森喜朗元首相(87)の存在が色濃く影を落としており、この関係性が今後の懸念材料として指摘されている。

参院選東京都選挙区、候補者選びの難航

自民党が今回、鈴木大地氏の擁立に至るまでには、東京都選挙区における複雑な候補者選考の背景があった。党関係者が明かすところによれば、昨年末には現職の武見敬三氏が公認を得たものの、残る1枠を巡って党内での調整が難航した。前回の衆院選では、参院東京選挙区から鞍替えした丸川珠代氏が落選しており、都連としては組織票が見込める武見氏とは異なる層、特に女性票の掘り起こしが急務となっていた。このため、都連は高学歴の著名な女性候補、例えば芸能人やNHKアナウンサーなどに打診を試みたが、いずれも実現しなかった。

その結果、難民支援活動を行うNPO法人代表理事の渡部カンコロンゴ清花氏(34)への内定が一時報じられた。しかし、彼女の過去のSNS投稿における安倍政権への批判が発覚し、党内から強い反対意見が噴出。都連は今年4月、渡部氏の擁立を断念せざるを得ない状況に追い込まれた。候補者決定が時間切れ寸前となる中で、鈴木大地氏の擁立論が急速に浮上したのである。

鈴木大地氏擁立の背景と森元首相の影響

実は、鈴木氏の名前が政界進出の候補として挙がったのは、今回が初めてではない。5年前、彼がスポーツ庁長官を任期満了で退任する際、千葉県知事選への出馬が自民党内の一部で取り沙汰されたことがある。当時の森田健作知事の後継候補として、千葉県連は地元出身である鈴木氏の擁立を目指していた。しかし、県連内部は一枚岩ではなく、後に知事に当選する熊谷俊人氏を推す勢力と分裂。泥沼化が予想される選挙戦で鈴木氏が落選した場合、「スポーツ庁初代長官」という経歴に傷がつくことを懸念した声が上がった。

この時、鈴木氏の出馬に待ったをかけたのが、「文教族のドン」として知られる森喜朗元首相に他ならない。森氏は、文部科学省の外局としてスポーツ庁が新設されるにあたり、鈴木氏を初代長官に強く推した「大恩人」とされる。長官就任後まもなく、鈴木氏は森氏が会長を務めていた東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事にも就任し、両者の関係はさらに緊密になった。

自民党の参院選候補者選びに関与したとされる森喜朗元首相自民党の参院選候補者選びに関与したとされる森喜朗元首相

森元首相の「鶴の一声」により、千葉県知事選での出馬を断念し、地元での厳しい選挙戦を回避した鈴木氏は、その後、日本水泳連盟会長の座に就任し、現在に至る。今回の参院選東京選挙区からの出馬においても、森氏の意向がどの程度影響しているのかは定かではないが、過去からの深い関係性を鑑みれば、無関係とは言い難いだろう。

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まとめと今後の展望

自民党が夏の参院選に向け、東京都選挙区で候補者擁立に苦慮した末、元スポーツ庁長官・日本水泳連盟会長の鈴木大地氏を決定したことは、党が置かれた厳しい現状を物語っている。知名度のある鈴木氏の「タレント候補」的な側面は、女性候補獲得に失敗し、時間がない中で党が頼らざるを得なかった現状の表れとも言える。

しかし、それ以上に注目されるのは、鈴木氏と政界の重鎮である森喜朗元首相との長年にわたる深い関係性である。スポーツ庁長官や五輪組織委員会理事への就任における森氏の影響力は広く知られており、今回の参院選出馬の背景にも森氏の存在がある可能性が指摘されている。有力な後見人を得ることは政治活動において有利に働く可能性がある一方で、森氏のこれまでの言動や影響力を巡っては度々批判も生じており、鈴木氏のクリーンなイメージに影響を与える懸念も拭えない。鈴木氏の選挙戦、そして彼がもし当選した場合の活動において、森氏との関係性が今後どのように影響を及ぼすのか、引き続き注目される。


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