教員の時間外勤務「月45時間以下100%」へ 文科省が指針改正案提示

文部科学省は19日、公立学校教員の業務量に関する指針の改正案を発表しました。この改正案には、教職員の時間外勤務を「1カ月あたり45時間以下とする教職員の割合を100%目指す」という具体的な文言が盛り込まれており、教員の長時間労働是正に向けた政府の明確な姿勢が示されています。日本の教育現場が直面する教員の過重労働問題に対し、実効性のある改革が期待されています。

改正給特法と目標設定の背景

今回の指針改正は、今年6月に成立した改正教員給与特措法(給特法)を受けたものです。改正給特法では、各教育委員会に対して業務量管理計画の策定とその実施状況の公表を義務付けており、2029年度までに教職員の月平均時間外勤務を約30時間に削減するという目標が明記されています。中央教育審議会での議論を経て、今秋を目途に新たな指針が公表される予定です。

新指針における具体的な目標水準と業務分類の見直し

文部科学省が示した改正指針案では、教育委員会に対し、この指針に即して業務量管理の実施計画を定めることを明確に求めています。その上で、以下の2つの具体的な目標水準を満たす設定が必要とされています。

  1. 1カ月の時間外勤務が45時間以下の教職員の割合を100%目指す
  2. 1年間の教職員の時間外勤務を月平均30時間程度とすることを目指す

さらに、教員の業務負担を軽減するため、現在の「業務の3分類」も見直されます。保護者からの過剰な苦情対応など、教員だけでは対応が困難な事案は「学校以外が担うべき業務」と明確に分類。また、学校のウェブサイト作成や管理、ICT(情報通信技術)機器の保守管理といった業務は「教師以外が積極的に参画すべき業務」と位置づけられ、事務職員らが中心となって担うことが想定されています。これにより、教員が本来の教育活動に専念できる環境整備が進められる方針です。

時間外勤務の削減目標が設定された忙しい学校の先生時間外勤務の削減目標が設定された忙しい学校の先生

委員からの懸念と今後の課題

この日の特別部会での議論では、委員から今回の改正案の実効性に対する疑問や、目標達成に必要な予算拡充の必要性、そして事務職員など、教員以外の職員への負担増への懸念といった声が相次ぎました。教員の働き方改革を進める上で、これらの懸念をいかに解消し、現場に浸透させるかが今後の大きな課題となります。目標達成に向けた具体的な支援策や、人員配置の強化が求められるでしょう。

今回の指針改正は、日本の学校教育が抱える根深い問題に切り込む重要な一歩です。しかし、目標設定だけでなく、それを実現するための財源確保や体制整備が不可欠であり、関係省庁や教育現場、そして社会全体の連携が引き続き注目されます。

参考文献