韓国で新たに大統領に就任した李在明(イ・ジェミョン)氏は、その対日スタンスに注目が集まっています。特に元徴用工問題に対する姿勢については、かつて対日強硬派と見られていた立場から変化の兆しを見せています。この変化が今後の日韓関係にどのような影響を与えるのか、国内外から様々な声が上がっています。
李在明新大統領は就任式で、戒厳令を宣言した前政権との違いを強調し、「国民が託した銃と剣で、国民の主権を奪うような内乱は、二度と起こしてはいけません」と発言しました。しかし、その後の記者会見では、対日政策に関して異なるニュアンスを示しました。「国家間の関係は、政策の一貫性が重要です。個人の信念を一方的に強要・貫徹することは難しく、現実を考慮しなければなりません」と述べ、元徴用工問題について、前政権が示した解決策を維持する可能性を示唆しました。
共に民主党を率いる李大統領は、過去に文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に元徴用工問題を巡って日本と対立し、日韓関係が悪化した経緯を知っています。当時、安倍晋三元総理(当時)が「国と国との約束を守るように求めていきたい」と述べ、韓国国内では日本製品の不買運動まで発生しました。しかし、現在の韓国の若者の間では、当時の状況とは異なる見方が広がっています。「当時と同じような状況にはならないと思います」「必要であればこうした活動も展開するべきですが、いい関係を保てる方がいいです」といった声が聞かれます。
尹(ユン)政権下で劇的に改善した日韓関係が、李在明新政権下でどう推移するのか懸念の声もあります。李在明氏は2023年の抗議集会で、「謝罪とは、被害者がもういいって言うまで続けることです」と述べるなど、対日強硬派としての姿勢を鮮明にしていました。しかし、大統領就任後の発言は変化しており、「真摯に本心で認めるべきことは認め、謝罪するべきことは謝罪し、協力するべきことは協力し、競争するべきことは競争する。合理的な関係になることを望みます」と述べるなど、より現実的な対応を示唆しています。この変化から、新大統領の対日政策の本心がつかみにくい状況です。
日本を訪れている韓国人からも様々な意見が出ています。30代の人は「グローバルな世の中なので、どの国ともいい関係を保ち、前向きに進むべきです」と関係改善を期待する一方、20代の人は「今回ちょっと(関係が)悪くなると思います」と懸念を示しています。それでも、多くの韓国人が「人は親切、食べ物おいしい。だから日本大好きです」と日本への好感を抱いています。
李在明新政権と向き合う日本政府内でも見方は分かれています。外務省幹部の一人は、「中国との関係やトランプ大統領の政策など不確実性が高まっているなか、積極的に日韓の関係を悪くしようということはないですよね」と、大きく関係を悪化させる可能性は低いと見ています。一方で、別の幹部からは「最初の数カ月は安全運転するだろうけど、徐々に素を出してくるよ」という慎重な見方も出ており、新政権の真意を測りかねている様子がうかがえます。
日韓関係の今後の展開は、李在明新大統領の実際の行動にかかっています。過去の発言と現在の発言の間の変化、そして国内外の多様な期待と懸念が交錯する中で、新政権がどのような対日政策を進めるのか、引き続き注視が必要です。
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韓国新大統領 李在明氏、対日政策に注目が集まる
李在明新大統領の就任と初期発言
李在明氏は韓国の新大統領として就任式に臨み、過去の権威主義的な政治への回帰を否定する姿勢を強調しました。彼は、前政権が戒厳令を宣言した状況に触れ、「国民の主権を奪うような内乱」を繰り返さないことを強く訴えました。この発言は、国内政治における過去との決別を示すものとして注目されました。
しかし、就任後の記者会見での対日に関する発言は、就任式の国内向けメッセージとは異なり、より現実的な側面を強調するものでした。李氏は、国家間の関係においては「政策の一貫性が重要」であり、「個人の信念を一方的に強要・貫徹することは難しい」と述べました。これは、元徴用工問題に対する前政権の解決策について、完全に覆すのではなく、ある程度維持する可能性を示唆する発言と受け止められています。この発言は、過去の対日強硬派としてのイメージとは異なる柔軟性を見せるものであり、今後の政策スタンスを巡る憶測を呼んでいます。
過去の対日強硬姿勢と現在の変化
李在明氏が所属する共に民主党は、文在寅政権時代に元徴用工問題を巡る日本の姿勢と対立し、日韓関係が深刻に悪化しました。この時期には、日本側が「国と国との約束」の履行を求め、韓国国内では日本製品の不買運動が広がるなど、両国間の溝は深まりました。李氏自身も、過去には元徴用工問題について、日本政府の謝罪は「被害者がもういいって言うまで続けること」であると強く主張するなど、対日強硬派としての発言が目立っていました。
しかし、大統領就任後の李氏の発言は、以前の強硬なトーンから変化しています。現在の李氏は、日韓関係について「真摯に本心で認めるべきことは認め、謝罪するべきことは謝罪し、協力するべきことは協力し、競争するべきことは競争する。合理的な関係になることを望みます」と述べています。この発言からは、対立一辺倒ではなく、現実的な外交を通じて関係を構築していきたいという意向がうかがえます。ただし、この態度の変化が本心からのものなのか、あるいは政治的な戦略に基づくものなのかは、現時点では不透明であり、「つかみきれない新大統領の本心」として様々な解釈がされています。
日韓関係の行方と関係者の声
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権下では、元徴用工問題の解決策提示などを通じて日韓関係が劇的に改善しました。李在明新政権下でこの改善の流れが維持されるのか、それとも再び緊張が高まるのかは、多くの関心事となっています。
韓国国内の若者たちの間でも、過去の不買運動のような極端な対立への回帰には否定的な意見がある一方、関係悪化を懸念する声も聞かれます。日本を訪れている韓国人旅行者の中には、「どの国ともいい関係を保ち、前向きに進むべき」と国際協調を重視する意見や、「今回ちょっと(関係が)悪くなると思います」と悲観的な見方を示す人もいます。しかし同時に、「人は親切、食べ物おいしい。だから日本大好きです」と、個人のレベルでの日本への好感は根強く存在しています。
日本の外務省幹部も、李在明新政権の対日政策について様々な見方をしています。ある幹部は、現在の国際情勢の不確実性を考慮すると、韓国側が意図的に日韓関係を悪化させる可能性は低いとの見方を示しました。一方で、別の幹部は、新政権は当初は慎重な姿勢を取るかもしれないが、時間が経つにつれて本来のスタンスが出てくる可能性があると指摘しており、予断を許さない状況であることを示唆しています。
結論
韓国の李在明新大統領は、元徴用工問題を巡る過去の強硬姿勢から、就任後のより現実的な発言へと変化を見せています。この変化の背景や真意はまだ明らかになっておらず、今後の対日政策の方向性については不確実性が残ります。尹政権下で改善が見られた日韓関係が維持・発展するのか、あるいは再び緊張が高まるのかは、李大統領の今後の具体的な言動にかかっています。韓国国内の世論や日本の対応、そして変化し続ける国際情勢も影響を与えるため、その行方を注意深く見守る必要があります。
出所:テレビ朝日、Yahoo!ニュース