創立75年を超える歴史を持つ国内屈指の老舗、谷桃子バレエ団が、かつて経営破綻の危機に瀕しながらも劇的な復活を遂げた。その立役者となったのは、「禁断密着プロバレエ団」と題されたYouTube動画シリーズだ。これが驚異的な再生回数を記録し、同バレエ団は瞬く間にチケット入手困難な人気団体へと変貌した。これは、日本の芸術団体が直面する課題と、革新的なアプローチによる成功を示す事例と言えるだろう。
谷桃子バレエ団の舞台風景:YouTube成功によりチケット難となった活気ある公演の様子を想起させる
崖っぷちからの挑戦:異色のYouTube企画
谷桃子バレエ団は、長い歴史を持ちながらも、近年は厳しい経営状況に置かれていた。そんな中、映像制作会社のディレクターである渡邊永人氏が、バレエ団の密着取材を担当することになった。当初、バレエに全く知識がなかった渡邊氏は、実際に公演を観てもその面白さを理解できなかったという率直な感想を抱いた。バレエの門外漢であった渡邊氏は、面白い動画を作るためにはまず自分がバレエを理解する必要があると考えた。そして、率直に「バレエを面白いと思えなかった」という正直な気持ちを、バレエ団のトップである高部尚子芸術監督に伝えた。この異例とも言えるアプローチが、その後の密着動画制作の鍵となった。本記事は、渡邊氏の著書に基づいている。
映像ディレクター渡邊永人氏:谷桃子バレエ団の高部尚子芸術監督に正直な感想を伝えた人物
明かされた芸術監督の厳しい収入事情
ある日、渡邊氏は高部芸術監督の自宅を訪れる機会を得た。都内の住宅街にあるその自宅の1階には、なんとバレエスタジオが併設されていた。実は、高部監督は谷桃子バレエ団の活動とは別に、ご主人と共に自身のバレエ教室を経営しているのだ。そこで明かされたのは、芸術監督としてのバレエ団からの収入は決して十分ではなく、夫婦で経営するバレエ教室からの収入が主な生計源であるという現実だった。これは、プロの芸術家やその運営者が直面する経済的な困難を浮き彫りにしている。状況は厳しいものの、4年前にバレエ団の経営が外部に委託されるようになってからは、芸術監督を含む団員の待遇は以前より改善されてきているという。YouTubeでの成功は、こうした経営基盤の強化にも繋がっていると考えられる。
新たな道を切り拓いた復活劇
谷桃子バレエ団の復活劇は、伝統ある芸術団体が現代の課題に対し、YouTubeという新たな手法でファンを獲得し、危機を脱した成功事例だ。同時に、芸術監督自身が他の収入源に頼らざるを得ない現状は、日本の文化芸術分野の経済的な厳しさを映し出す。この物語は、苦境にある多くの団体に示唆を与え、芸術を取り巻く環境への関心を高めるきっかけとなるだろう。
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