アメリカのトランプ前大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻について、独特の持論を展開し、注目を集めています。特に、ドイツの有力政治家との会談では、この紛争を「子どものケンカ」に例える発言が飛び出し、波紋を呼んでいます。
ドイツのメルツ氏と会談するトランプ前大統領。ウクライナ戦争に関する「子どものケンカ」発言で波紋
トランプ氏は「悲観的かもしれないが、子ども同士が憎み合い、公園で激しくケンカしているようなものだ」と表現。引き離そうとしても拒まれる現状を踏まえ、「しばらくケンカさせてから引き離す方が良い」との持論を展開しました。
ウクライナ南部ヘルソン州への大規模攻撃と報復の可能性
こうした中、ウクライナ南部では激しい攻撃が続き、ヘルソン州では州の庁舎が破壊されるなど大規模な攻撃が発生しました。ロシア軍は、誘導ミサイル、ドローン、そして砲撃を組み合わせて、この街を執拗に攻撃しています。
東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠准教授は、地方自治体の庁舎への攻撃としては久しぶりの規模であり、国際的な注目も高いと指摘。「通常の爆撃に比べ政治的な意図があった可能性があり、ロシア領内の爆撃基地に対するウクライナのドローン攻撃への報復という側面が考えられる」と分析しています。
実際、この時期、ウクライナによるロシア領内への攻撃も目立っていました。戦略爆撃機数十機を標的としたドローン攻撃や、鉄道インフラの破壊、クリミア大橋への爆破工作などが報じられています。
ロシアのプーチン大統領はこうした状況に対し、珍しく苛立ちを見せ、ウクライナへの停戦呼びかけについて「西側からの武器供給や強制動員、次のテロ行為の準備に使われるだけだろう」と主張。ロシアによる攻撃は軍事施設と民間施設の区別なく行われる傾向があり、事態のエスカレーションと犠牲者の増加が懸念されています。
ドイツ要人との会談:戦争終結への異なるアプローチ
このような緊迫した状況を変えるべく、ドイツから有力政治家がホワイトハウスを訪れました。ドイツの最大野党CDU党首、フリードリヒ・メルツ氏です。ドイツ移民だったトランプ氏の祖父に敬意を示しつつ、メルツ氏は「あすは6月6日、アメリカ軍がヨーロッパの戦争を終結させたノルマンディー上陸作戦の日です」と切り出しました。
そして、「今回も、あなたと私たちの手にかかっているのです」と述べ、アメリカの役割の重要性を強調。これに対し、トランプ氏は「ドイツにとってはいい日ではなかった」と応じました。メルツ氏は「そうですが、わが国がナチスから解放された日でした。あなた方に恩義があります」と返答。さらに「アメリカは今回も戦争終結に向け極めて強い立場にあると言いたい。何ができるか話し合いましょう」と、具体的な協力を求めました。
トランプ氏は、プーチン氏とも「ケンカ」の話をしたと言及し、「あなたは苦しんででも、戦い続けるかもしれない」と伝えたと述べました。「引き離されるまで、双方が苦しむのがケンカだ」との持論を改めて展開。「私はロシアのお友だちと言われるが、そうじゃない。あなた(メルツ氏)とお友だちだ」と語りました。
メルツ氏は、(Q. ロシアとウクライナの戦争を子どものケンカに例えた大統領に賛同するか)との問いに対し、「私はトランプ大統領こそ、ロシアに圧力をかけられるキーパーソンであると本人に伝えました」と回答。「我々はウクライナの味方であり、プーチン氏に戦争を終わらせるため、ウクライナをさらに強くします。これは私たちの問題なのです」と、ドイツの断固たる姿勢を強調しました。ドイツはウクライナへの長距離ミサイル製造支援にも踏み切っています。
今回のトランプ氏とメルツ氏の会談は、ウクライナ戦争終結へのアプローチにおける米独間の微妙な差異を示唆しています。トランプ氏が紛争を収束させるための独自の道筋を模索する一方、ドイツはウクライナ支援の強化を通じてロシアに圧力をかける姿勢を明確にしました。民間施設への攻撃が続く中、事態打開への道筋はなお不透明です。