街中にたたずむ、思わず目を奪われるような少し変わった形の建物。それらはなぜ、そのようなユニークな姿をしているのでしょうか。そこにはどんな物語があり、どのような暮らしが営まれているのか。本記事では、岐阜県に存在する「フシギな物件」の一つ、県営住宅「ハイタウン北方」に迫ります。
名古屋駅から快速電車で約20分、岐阜駅に到着後、バスに乗り換えて北西方面へ向かいます。長良川を渡り、濃尾平野の端を進むと、やがてその特徴的な建物群が見えてきます。バスを降りて近づくと、その大胆な外階段や、カラフルでポップな壁の色、ガラス窓に覆われたモダンな雰囲気に視線が釘付けになります。ギザギザした形状や、ブロックを積み上げたような立体的なデザインなど、それぞれ異なる個性を持つ4棟が並び立っています。
岐阜県北方町に立つ、鮮やかな色彩と大胆な外階段が特徴の県営住宅「ハイタウン北方」
これらのフシギな建物の正体は、岐阜県が整備した県営住宅「ハイタウン北方」です。岐阜市に隣接する本巣郡北方町に位置しています。これは、既存の県営住宅の建て替え事業として計画されました。第1期工事が1998年に、第2期工事が2000年にそれぞれ竣工し、合計430戸の住戸が供給されています。
ハイタウン北方の特異なデザインは、複数の著名な建築家が関わった結果です。特に、全体のコーディネーターを務めたのは、世界的に知られる建築家の磯崎新氏(1931〜2022)です。磯崎氏は、「水戸芸術館」や「つくばセンタービル」、「ロサンゼルス現代美術館」など国内外で数多くの革新的なデザインを手がけ、熊本県の「くまもとアートポリス」事業にも深く関わりました。上空から見ると、中央に広がる中庭を囲むように、それぞれの建築家による個性的デザインの4つの住棟が配置されている構成がよくわかります。
この類を見ない県営住宅の内外を詳しく見てみたいという思いから、岐阜県の都市建築部住宅課に相談する機会を得ました。実際に敷地内へと足を踏み入れると、外観から想像していた以上にフシギで魅力的な光景が広がっていました。
ハイタウン北方は、単なる集合住宅ではなく、著名な建築家のデザイン哲学が息づく、日本の団地のイメージを刷新するような試みとして特筆されます。この個性的な建築は、そこに暮らす人々の生活や、周辺地域の景観にも大きな影響を与えていることでしょう。