長野県中野市で発生した4人殺害事件から2年が経過しました。この事件で起訴された青木政憲被告の裁判が9月にも始まる見通しとなる中、被害者の冥福を祈り現場近くに観音像を建立した被告の両親が、公判廷で証言することが明らかになりました。加害者家族を支援する団体の代表は、両親の証言が持つ意義について言及しており、社会的な関心が集まっています。
苦悩の両親、無関心な被告
事件から2年を迎えた5月25日、中野市の事件現場近くには、被告の両親が建立した観音像に花が手向けられていました。両親は被害者の冥福を祈り続けています。
中野市4人殺害事件現場近くに被告両親が建立した観音像に手向けられた花
一方、住民2人を殺害した動機について「ぼっちとばかにされていると思った」と供述した青木政憲被告(33)は、弁護人によると事件や裁判に興味を示さず、謝罪の言葉もない状況だと報じられています。この対照的な姿は、事件の複雑さを物語っています。
加害者家族が直面する現実と支援
事件後、加害者家族の支援を行うNPO法人「World Open Heart」の理事長である阿部恭子氏は、青木被告の両親への支援を続けてきました。阿部氏によると、両親の「苦しい気持ちに変化はない」といい、現在も困難な日々を送っている様子がうかがえます。
NPOを立ち上げたのは14年前。被害者支援の研究を通じて、激しい非難や差別を受ける加害者家族の厳しい実情を知ったことがきっかけでした。阿部氏は、多くの加害者家族が深い責任を感じ、「究極の謝罪」として自ら命を絶つケースも少なくないと語ります。青木被告の両親も一時期、自死を考えるほど追いつめられていたといいます。阿部氏は、そうした状況から共に前を向き、「なぜ事件が起きてしまったのか」を考え続けることの重要性を強調しています。精神面のケアはもちろん、転居や就労などの生活再建、マスコミ対応など様々なサポートを続ける阿部氏の活動は、孤立しがちな加害者家族にとって大きな支えとなっています。
社会全体で事件と向き合う必要性
阿部氏は、加害者家族への過剰な責任追及は逆効果であり、社会の側が「犯罪者を助ける術はなかったのか」という視点から考える必要があると訴えます。
責任を問うだけでなく、新たな加害者を生み出さないためにも、社会が加害者家族を孤立させず「包摂する(受け入れる)」ことが重要だと指摘。悲劇の連鎖を断ち切るために、家族と共に事件に向き合うことの必要性を強調しています。社会全体で犯罪の背景にある問題や、そこから立ち直ろうとする人々をどう支えるかを考えることが、真の意味での再発防止につながるというメッセージです。
裁判での両親の証言が持つ意義
長野地方裁判所にて9月にも始まると見込まれる裁判では、青木被告の両親も法廷に立つ予定です。
阿部氏は、裁判の場で両親が考えることや抱える後悔が明らかになるだろうと述べています。そして、その家族が持つ「後悔」こそが、次に同様の犯罪が起こらないようにするための「重要な情報」となると語り、両親の証言が単なる謝罪や弁明にとどまらず、事件の深層や再発防止策を考える上で貴重な insight を提供する可能性を示唆しています。両親が語るであろう、被告の生育環境や精神状態、事件に至るまでの経緯に関する情報は、なぜこのような悲劇が起きてしまったのかを理解する上で不可欠であり、今後の犯罪予防策を検討する上での重要な手がかりとなるでしょう。
中野市で起きた痛ましい事件から2年。まもなく始まる裁判では、加害者の肉親である両親の証言が注目されています。彼らが事件発生から抱え続ける苦悩、そして支援団体の見解は、加害者家族が直面する社会の壁と、再発防止のために社会全体で考えるべき課題を浮き彫りにしています。両親の法廷での言葉が、事件の真相解明と、今後の社会のあり方について深く考えるきっかけとなることが期待されます。
参考資料:FNNプライムオンライン via Yahoo!ニュース