ハーバード大サンデル教授が分析「トランプ2期目は“復讐”が目的」米国の転換点か?

2025年4月、ドナルド・トランプ米国大統領の2期目政権が発足から最初の100日を迎えました。この出現しつつある新しい世界をどう理解すべきか、ハーバード大学の政治哲学者マイケル・J・サンデル教授がスペイン紙「エル・パイス」にその見解を語りました。

ハーバード大学の政治哲学者、マイケル・J・サンデル教授の肖像。トランプ政権2期目について分析。ハーバード大学の政治哲学者、マイケル・J・サンデル教授の肖像。トランプ政権2期目について分析。

「復讐」を目的とする2期目

サンデル教授は1年ほど前、トランプ氏が再び勝利すれば、1期目よりもはるかに危険な存在になるだろうと警告していました。その理由として、2期目では執務をより手際よくこなし、最悪の衝動を抑え込む側近がほぼいなくなることを挙げています。この予測は残念ながら的中しました。

1期目、トランプ氏は不動産王でありリアリティ番組のスターに過ぎず、国政運営の経験が不足していました。そのため、彼はある程度の信頼性と法の支配を尊重し、彼の手綱を引くことができる人物を補佐役に任命しました。

しかし、2020年の大統領選で敗北したことは、彼に激しい怒りと、選挙結果を否定するほどの深い屈辱を与えました。2024年の再出馬は「2期目はリベンジが目的だ」と公言するものでした。そして再選されると、大統領権限に加えて憲法が認めていない権限まで持ち出し、自らの復讐計画の実行を助ける側近に囲まれています。私たちがいま目の当たりにしているのは、かつて誰も予想し得なかった、極めて大規模な復讐計画なのです。

際限なき大統領権限の行使と法廷闘争

トランプ氏が大統領令を連発しているのは、大統領権限がどこまで通用するかを意図的に試しているためだとサンデル教授は指摘します。連邦裁判所に持ち込まれることを織り込み済みで、不当な強制送還命令や学生ビザ取り消し命令、連邦政府職員の恣意的な解雇命令などを次々と発令し、従来の大統領権限の壁を破壊しようとしています。

これらの命令は連邦裁で敗訴することもあるでしょうが、勝訴するケースも出てくるはずです。そして最終的な判断を下すのは連邦最高裁となります。

世界における米国の地位の変化

もちろん、対外政策も見過ごせません。トランプ氏は欧州の同盟各国やカナダ、メキシコに背を向けています。NATOを敵視し、ウクライナとロシアの戦争では事実上ウクライナを見捨て、ロシア側についています。こういった政策は元に戻すのが極めて困難であり、結果として世界における米国の地位は大きく変わってしまうでしょう。

「正常な状態」への回帰は可能か

トランプ政権最初の100日間は、現代史上最も重要な歴史の転換点になったのでしょうか。サンデル教授によれば、一連の大統領令のいくつかが連邦最高裁によって是正されるならば、この100日間がさほど重要な転換点だったとはいえないかもしれません。しかし、大統領令のほんの一部でも最高裁が合憲と判断しお墨付きを与えた場合、私たちは米国の政治体制の根本的な転換を目の当たりにすることになります。

トランプ氏が再選を果たし、2期目の政権で大統領権限を攻撃的に行使し続けている現状では、「正常な状態」に戻ることはかなり難しいだろう、とサンデル教授は締めくくっています。

参考資料

マイケル・サンデル ハーバード大教授が分析「トランプ2期目は“復讐”が目的」米国の転換点か? – Yahoo!ニュース