カリフォルニア 不法移民 摘発 抗議デモ、トランプ氏が州兵2000人派遣へ – Newsom知事は反発

米国西部カリフォルニア州ロサンゼルスで不法移民の一斉摘発を巡る抗議デモが拡大する中、トランプ大統領は州兵2000人を現地に派遣する大統領覚書に署名した。ホワイトハウスは7日、「無法状態への対処」のためと説明したが、カリフォルニア州のニューサム知事は「意図的な扇動であり、緊張を高めるだけだ」と強く反発しており、連邦政府と州政府の間で緊張が高まっている。

摘発とその後の抗議活動

移民・税関捜査局(ICE)は6日、ロサンゼルス全域で一斉摘発を実施し、不法滞在の疑いで少なくとも44人を拘束した。この摘発をきっかけに抗議デモが急速に拡大した。

7日には、ロサンゼルス郊外の路上で車両が放火されるなど、一部が過激化。デモ隊と治安当局が催涙弾が飛び交う激しい衝突に至る場面も見られた。

カリフォルニアの不法移民摘発後デモで警察官が男性を拘束カリフォルニアの不法移民摘発後デモで警察官が男性を拘束

トランプ大統領の派遣決定と正当化

トランプ氏は、ホワイトハウスが州兵派遣を発表する前に、自身のソーシャルメディア上で状況に言及。「ニューサム知事とバス・ロサンゼルス市長が自分たちの仕事をできないのであれば、連邦政府が介入して問題を解決する」と主張し、連邦政府の介入を示唆していた。

さらにヘグセス国防長官はX(ツイッター)への投稿で「暴力行為が続くのであれば、海兵隊を投入する」との考えを示し、強硬姿勢を鮮明にした。

トランプ氏は8日未明にもソーシャルメディアに投稿。「2日間に及ぶ暴力、衝突、混乱の後、州兵はよくやった。扇動者や厄介者らによる急進左翼の抗議は容認されない」と述べ、実際に州兵を抗議デモの鎮圧に投入した可能性を示唆した。また、「今後は抗議活動で覆面をすることは許されない」とも言明した。

ニューサム知事の反論と連携強調

一方、カリフォルニア州のニューサム知事は、トランプ大統領による州兵派遣に対し強く反発している。知事は、州政府、ロサンゼルス市、郡政府が密接に連携して事態に対処しており、連邦政府の介入は不要であるとの認識を強調した。

ニューサム知事は、連邦政府による州兵派遣を「誤った任務であり、市民の信頼を損なう」と批判。「(州兵の派遣は)意図的な扇動で、緊張を高めるだけだ」と述べ、トランプ氏の決定が事態を悪化させかねないとの懸念を示した。

州兵派遣の権限と過去の事例

米国の州兵は通常、各州知事の指揮下にある。しかし、大統領には非常時に州兵を直接指揮下に置き動かす権限が憲法や連邦法によって与えられている。トランプ氏は今回の抗議デモを「連邦政府への反逆」と位置付けることで、この大統領権限を行使し州兵派遣を正当化しようとしたとみられる。

しかし、国内のデモ対応で州兵を連邦政府の指揮下に置いて使用することについては、権限の逸脱や過剰な介入だとの批判的な見方も強い。トランプ氏は1期目の2020年、ミネソタ州で起きた白人警官による黒人男性暴行死事件後の抗議デモに際しても、州兵や連邦軍を投入する考えを示し、政権内外から強い批判を浴びた経緯がある。今回のカリフォルニア州への州兵派遣も、同様の政治的論争を引き起こしている。

まとめ

カリフォルニア州での不法移民摘発後の抗議デモに対し、トランプ大統領が州兵派遣を決定したことは、連邦政府と州政府間の権限と介入のあり方を巡る深刻な対立を生じさせている。トランプ氏は治安回復を名目に大統領権限を行使したが、ニューサム知事はこれを政治的な扇動と見なし反発。過去にも同様の対応で批判を受けた経緯があり、今回の決定も今後の政治的、社会的な波紋を広げることが予想される。

参照

  • AP通信
  • ホワイトハウス発表
  • トランプ氏 ソーシャルメディア (X) 投稿
  • ヘグセス国防長官 X 投稿