【ニューヨーク=上塚真由】新型コロナウイルス感染拡大の防止策として、米政府は米国民の渡航中止勧告や、ビザ(査証)発給業務の一時停止などを相次いで決定し、在米日本人にも不安や混乱が広がっている。日系企業が多い東部ニューヨーク州や西部カリフォルニア州などでは、外出を制限する命令が出され、日系企業への経済的影響も懸念される。
ニューヨーク州のクオモ知事が20日に発令した自宅待機命令。生活に不可欠な一部の業種を除いて、全社員の在宅勤務が22日夜から義務付けられた。違反すると、罰金もあるという。発表後、各社とも対応に追われ、ニューヨーク市のある日系企業の担当者は「あと2日で、各社員のパソコンなど自宅でのインフラ整備を整えないといけない。決済などペーパーレスが導入できない業務もあり、州の実施までに間に合うのか不安だ」と話した。
また、多くの社員を抱えるメーカーの幹部は、「すでに国内外の出張を制限し、日本からの渡航者には自主的に自宅待機措置を取っている」という。懸念されるのはビザの発給業務の一時停止といい、「駐在員のビザの更新や発給ができなくなり、人事の手続きが滞っている」と指摘した。
トランプ政権が19日に発令した日本を含めた渡航禁止勧告では、日本人は対象外となっているものの、日系企業の社員の約9割は現地採用の米国人だ。
日本貿易振興機構(ジェトロ)ロサンゼルス事務所の北條隆さんは「日系企業についても、人の流れをほぼ全面的に禁止することになるだろう」と影響を指摘。また、各州で相次いでいる自宅待機命令についてニューヨーク市などでは日系企業の対応が進むものの、中西部の工場では、「従業員の在宅勤務を導入できない」という声が上がっているという。
移動が制限される中で市民生活にも不安が広がる。ニューヨーク・ブルックリン地区に住む自営業の日本人男性(34)は、「今は米国よりも日本のほうが安全に感じる。日本に帰国したいが、米国に戻って来れるのか心配だ」と話した。