沖縄県・尖閣諸島周辺における中国海警局のヘリコプターによる日本の領空侵犯から1カ月が経過しました。この間、日本政府は中国に対して抗議は行ったものの、深刻な危機に対する認識が不足していると見受けられる対応に終始しています。このような状況が続けば、日本の領土が失われる危険性も否定できません。本記事では、今回の事態がいかに異常であるかを指摘するとともに、領土と主権を奪おうとする中国の硬軟織り交ぜた揺さぶりに対し、日本がいま取るべき行動について考察します。
「異常な」領空侵犯の詳細
報道によると、5月3日午後0時18分頃、80歳代の日本人男性が操縦する小型民間機が尖閣諸島最大の島である魚釣島の周辺領空に接近しました。ほぼ同時に、同諸島の接続水域を航行していた中国海警局の艦船「海警2303」が日本の領海に侵入。その直後の0時21分、海警2303は搭載していたヘリコプターを発艦させ、日本の領空を侵犯しました。
警戒監視にあたっていた海上保安庁の巡視船から「危険が生じる恐れがある」との連絡を受けた民間機は直ちに領空を出域しましたが、中国海警局のヘリコプターは海保からの警告を無視して領空侵犯を継続。侵犯開始から約15分後の0時36分に海警2303へ帰還したとされています。
尖閣諸島最大の島、魚釣島を捉えた写真
尖閣諸島周辺で中国機が領空侵犯したのは、今回を含めて3例目です。最初の事例は2012年、国家海洋局(当時、現在の海警局)のプロペラ機によるもので、これは日本政府による尖閣諸島の国有化に対する中国側の威嚇行動と見られていました。2回目は2017年、領海に侵入した海警船から小型無人機が発進されたケースです。
しかし、今回の領空侵犯は過去2回の事例と比べて大きく異なり、より深刻な意味を持っています。それは、侵犯直後に中国海警局が「日本の民間機が領空を侵犯したため、ヘリを発艦させて警告、追い払った」とする報道官談話を発表し、さらに中国外務省も「中国の領空に不法侵入した」として日本へ抗議を行ってきた点です。
周到な計画と管轄権拡大
なぜ今回の事態が特に深刻で異常と言えるのでしょうか。それは、中国側が日本の民間機が尖閣諸島周辺の領空を飛行することを事前に察知しており、その民間機が領空に入った時刻に合わせて海警船を日本の領海に侵入させ、ヘリコプターによる領空侵犯を敢行したことにあります。さらに、侵犯行為の直後に中国政府が相次いでメッセージを発信するという、極めて計画的かつ周到に準備された行動であったことが示唆されます。
今回の事態が示す深刻な状況は、中国による一方的な管轄権行使の試みが、これまでの「領海」から「領空」へと拡大したことです。そして、その拡大した管轄権を既成事実化(実績づくり)するために、これほどまでに用意周到な行動に出たという点にあります。日本の主権が現実的に脅かされている事態であり、政府の対応が改めて問われています。
出典: https://news.yahoo.co.jp/articles/44d07c91ba37400b0b257e63d2034d8c06608d0a