週刊文春が報じた野村哲郎元農相への巨額献金疑惑は、JAグループと農水省、そして農水族議員との間の深い癒着構造に再び焦点が当たっています。特に、現在のコメ不足と価格高騰の背景にあるとされる「天下り」問題は、国民生活にも直結する重要な論点です。
JA出身とされる野村哲郎元農林水産大臣。JA関連団体からの巨額献金疑惑が報じられた人物。
コメ不足と高騰:JAの要望と「減反政策」の実態
現在、スーパーで目にする5キロ入りのコメは4000円を超えるものが多く、前年のほぼ2倍という高値で推移しています。政府は春から備蓄米の放出を始めましたが、価格への影響は限定的です。この高値の背景には、JAの要望に基づき、コメの生産量をコントロールする「減反政策」が実質的に続けられてきた結果であり、この政策が高水準の米価維持に繋がったと農水省関係者は見ています。
農水省とJAの「癒着」構造:問われる「天下り」問題
では、なぜ農水省はJAの要望を受け入れ続けてきたのでしょうか。その背景にあるのが、JA関連団体への農水省官僚の「天下り」です。農水省関係者は、この癒着構造こそが、結果的にコメ不足を招いていると言っていいと指摘しています。かつて2005年、小泉純一郎政権下で全農改革が試みられ、農水省はワーキンググループ資料で「幹部職員が全農の役員に就職するという、いわゆる『天下り』は今後とも行わない」と明言しました。しかし、内閣官房の公表資料を精査すると、確認できる2009年以降だけでも、28人の農水省職員がJA関連団体に再就職していることが明らかになっています。
農水省の見解:再就職と「減反」終了の主張
この「天下り」の実態について、農水省は週刊文春の取材に対し見解を示しています。「平成19年(2007年)の国家公務員法改正によって現職職員による再就職あっせんが全面禁止されたことから、現職職員によるあっせんは行っておりません」と説明し、再就職に係る届出制度の対象である離職後2年以内のOB以外は承知していないとしています。また、減反政策推進がコメ不足を加速させているとの指摘に対しては、「いわゆる減反政策については、平成30年(2018年)産より終了し、現在は、農業者や産地の自らの経営判断による『需要に応じた生産』を基本としているため、ご指摘には当たりません」と反論しています。
野村元農相への献金報道は、JAグループと農水省の根深い関係性を改めて浮き彫りにしました。「天下り」の実態を示すデータと、農水省側の再就職あっせん否定や「減反」終了という主張は対照的です。この複雑な構造が、果たしてコメの生産・価格にどのように影響しているのか、引き続き注視が必要です。
参考資料
- 週刊文春デジタル 6月12日号掲載記事 (Yahoo!ニュースより) https://news.yahoo.co.jp/articles/8c27d6c19bf051e5d1902fb0e4f8c5130d8c7d55