元京都市役所職員が祇園甲部の芸妓に転身:小惠美さんの異色なキャリアパス

国内有数の花街である京都・祇園甲部(京都市東山区)に、異色の経歴を持つ芸妓が誕生しました。置屋兼お茶屋「美の八重」に所属する小惠美さんです。彼女は東京都出身で、慶応大学を卒業後、京都市役所職員を経て芸妓の道へと転身。今年5月には、厳しい修行を終えて本格的なお座敷デビューとなる「お店出し」を迎えました。公務員という安定した職を辞し、花柳界へと飛び込む決意をさせたものとは一体何だったのでしょうか。

京都市東山区「美の八重」で、元公務員から芸妓に転身した小惠美さん京都市東山区「美の八重」で、元公務員から芸妓に転身した小惠美さん

東京出身、京都への深い情熱

小惠美さんは東京都品川区で生まれ育ちました。慶応大学法学部政治学科に進学し、日本政治思想史のゼミに所属。歴史への深い関心から、次第に京都という街に惹かれていったと語ります。「日本らしい文化が好きで、お寺や昔ながらの街並みが残る京都にいつか住みたいと思っていました」と、京都への強い憧れを抱いていたことを明かします。

京都への思いが募る中、彼女は就職を機に京都への移住を決意しました。「せっかく京都に住むのなら、京都のためになる仕事をしたい」との思いから、2022年4月に京都市役所へ入庁。2年間にわたり固定資産の評価業務を担当しました。「本当に京都に就職できて良かったと思いました。周りの方も良い方ばかりで、ホワイトな職場で、働きやすくて本当に素晴らしいところでした」と、市役所での勤務を振り返っています。

舞妓との出会い、運命を変えた衝撃

そんな安定した日々を送る中で、小惠美さんの人生の転機が訪れます。祇園祭に同期の職員と出かけた際、巡行する山鉾の一つ「鷹山」の関係者と会話する機会がありました。「『京都が大好きで、京都に就職しました』と話したら、『そんなに好きなら、お座敷に連れて行ってあげるよ』と誘ってくださって…」と、当時の状況を語ります。京都に芸妓や舞妓の世界があることは知っていたものの、具体的な知識はなく、憧れを抱いたことはなかったと言います。

その関係者とともに訪れた畳敷きのバーのような空間で、彼女は初めて舞妓を間近で見て、言葉を交わしました。「こんなにきれいで、お人形さんのように可愛らしい人がいるんだと感動しました」と当時の心境を語ります。その時点では、自分がこの道に進むとは全く考えていませんでしたが、約2か月後にお座敷に行く機会を得ます。そこで初めて目の当たりにした舞妓の舞に、小惠美さんは文字通り衝撃を受けました。「本当に雷に打たれたような感じでした」と、その感動を表現しています。この運命的な出会いが、彼女を公務員から芸妓への道へと導く決定打となったのです。

参考文献