山尾志桜里元衆院議員(50)は10日、国会内で記者会見を開き、国民民主党から今夏の参院選比例代表候補として出馬することを正式に表明した。しかし、会見の焦点は議員時代の不倫報道に集中し、山尾氏は事実関係への具体的な言及を避け、当時の対応に「おごりがあった」と陳謝するにとどまった。これに対し、報道陣からは「納得できない」といった指摘が相次ぎ、会見は異例の展開となった。山尾氏は自身の存在が党勢低迷の一因となっているとの認識を示しつつも、出馬辞退は否定。約2時間半に及んだ会見でも過去の負のイメージを完全に払拭するには至らず、党勢拡大を目指す国民民主党にとって不安を残す形となった。
国民民主党から参院選出馬を表明し、記者会見に臨む山尾志桜里氏
過去の不倫報道と会見での「未熟さ」への謝罪
5月14日の公認内定発表から約1カ月を経て、山尾氏が100人近い報道陣が集まった国会内の会議室に姿を見せた。まず語られたのは出馬理由ではなく、「過去の反省」だった。特に、政治家としてのキャリアが一変するきっかけとなった、2017年の衆院議員時代の不倫報道について言及。山尾氏は当時、男女関係は否定しながらも、所属していた民進党に離党届を提出した経緯がある。この際の記者会見では、自身の主張だけを述べ、質疑に応じずに会場を後にし、「逃げるんですか」という記者の問いかけを振り切った「逃亡」と揶揄される対応が問題視されていた。この日の会見で山尾氏は「8年前の自分の行動と対応の未熟さを、おわび申し上げます」と謝罪の言葉を述べた。
不倫の事実関係への言及は再び拒否
しかし、不倫報道の事実関係そのものについては、「今、新しく言葉をつむぐことはご容赦をいただきたい。いろいろな思いの方がおられる」として、具体的な言及を避けた。8年前の会見で「そうした事実はない」と答えた点については、今回も同様の立場だと主張。「(報道で)指摘された方と、私生活、仕事で、現在、特段交流はない」と強調した。
公認発表からの経緯と党勢への影響を認める
約8年の時を経て、そして公認発表からまもなく1カ月が経過してからの会見となった。この間、昨年の衆院選での躍進以降上昇傾向にあった国民民主党の政党支持率は下落傾向を見せている。山尾氏は、この支持率下落に「自分に一因があるのだろうと。申し訳なく思う」と述べ、SNSなどでの自身への批判が「想定以上だった」と漏らした。会見開催が遅れたことについては、「逃げていたということではない」と釈明した。
出馬辞退は否定、続く説明責任の追及
今年に入って、初当選同期である玉木雄一郎代表から出馬を打診されたという山尾氏。当初は悩んだものの、「決めた以上(出馬)辞退はしない」と言い切った。しかし、会見は最終盤まで不倫報道の説明ぶりに対する「納得できない」「きちんと説明を」という質問が飛び交う異例の展開が続いた。「納得できないような説明でごめんなさい。すみません」と繰り返し謝罪の言葉を口にした山尾氏は、「私にもいろんな思いはあるが、言葉にする選択ができない。自分の生の思いを口にすれば、そうだったのかと思ってくださる方もいるかもしれないが、それを聞いて傷ついたり、いやな思いをしたりする方もいるかもしれない」と述べ、再び「すみません」と繰り返した。
殺害予告も受け、政策実現へ向けた活動を強調
山尾氏周辺によると、これまでに複数の「殺害予告」を受け、警察に被害届を提出しているという。参院選で訴える政策として、「安全保障と人権保障の両立」などを掲げ、政策チラシを配布するなど、積極的に街頭にも立つ意向を示した。しかし、永田町での受け止めは厳しかった。ある野党関係者は「過去の清算ができておらず、記者会見する意味があったのか」と突き放すコメントをしている。
約4年ぶりの国政復帰となる再挑戦は果たせるのか。山尾氏の参院選は、有権者やメディアからの説明責任を求める声と戦う厳しい選挙戦となる様相だ。