パキスタンTikToker殺害、オンライン非難が波紋 世界の女性の安全に懸念

パキスタンの人気TikToker、サナ・ユサフさん(17歳)が自身の誕生日投稿後まもなく死亡した。胸を銃撃されたユサフさんの遺体画像がパキスタンのSNSで拡散されるにつれて、オンラインおよび現実世界での女性の安全に対する不安と怒りが高まっている。この悲劇は、女性に対する暴力と、それに続く被害者非難という深刻な社会問題に再び光を当てている。

警察は、ユサフさんを殺害した疑いで無職のウマル・ハヤット容疑者(22歳)を拘束したと発表した。警察の調べによれば、ハヤット容疑者はユサフさんと交際を試みたが拒否されたことが動機とされる。ユサフさんの父親はCNNに対し、家族の深い喪失感を語り、娘が以前に嫌がらせを受けていたことを知らなかったと明かした。父親は、ユサフさんが勇敢で恐れを知らない人物だったと述べている。

ユサフさんの葬儀が進められる中、彼女のTikTokやインスタグラムの投稿には、信じがたいほど不快なコメントが相次いだ。「こういうことが起きてうれしい」「今日は幸せ。音楽をかけて楽しく踊る」といった、彼女の死を喜ぶような内容が含まれていた。さらに、パキスタンの伝統衣装を着用したユサフさんの写真の下には、「注目を集めたり、自分のことを露呈したりするよう若い女性に促すことは、深刻な悪影響をもたらすことがある」といった、被害者を非難するような書き込みも見られた。

オンラインの安全性を推進する女性主導の非営利団体DRFは、こうした言説に対して強い懸念を表明している。DRFは、このようなコメントが「女性のオンライン上での存在や、認識されている道徳観を、暴力の正当化と危険な形で結びつけている」と指摘。さらに、「こうした形のデジタル自警行為は、被害者を責める文化のまん延を助長し、虐待が常態化し、加害者の責任が転嫁される」と厳しく批判した。

パキスタンで女性に対する暴力に抗議する人々。殺害されたTikTokerサナ・ユサフさんの写真を持った活動家パキスタンで女性に対する暴力に抗議する人々。殺害されたTikTokerサナ・ユサフさんの写真を持った活動家

有害なオンラインコメントはパキスタン女性の怒りを呼び、ユサフさんの正義を求める声は同国の「男性性の危機」を浮き彫りにする。女性への暴力議論はパキスタンだけではない。メキシコではインフルエンサー射殺など中南米でフェミサイド(女性を標的とした殺人)の高い発生率が露呈。オーストラリアでの最近の大規模調査でも男性の3人に1人が親密なパートナーに暴力経験があると回答しており、問題は世界に広がる。

サナ・ユサフさんの悲劇は、ソーシャルメディアの普及が進む中で、女性がオンラインとオフラインの両方で直面する危険性、そして根深い被害者非難の文化がもたらす悪影響を強く認識させる出来事となった。この事件は、世界中で女性の安全と権利を守るための取り組みが、喫緊の課題であることを改めて示唆している。

出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/7057e58d5c281078ce5f34203a0022908adef2b4