アパレル業界全体で大ヒット商品が生まれにくくなっている中、近年登場から取り扱い業者の数を増やしているのが「リカバリーウェア」という分野です。櫻井翔さんや出川哲郎さんといった有名タレントの起用で話題となり、テレビやウェブで盛んに広告が流されています。代表的なのは『BAKUNE(バクネ)』や『リライブシャツ』です。これらは鉱石やセラミックを繊維に練り込んだ生地で、遠赤外線効果により全身の血行促進、疲労回復や肩凝りの緩和が期待できるとされています。主に寝間着として、またスポーツウェアや肌着としての用途を掲げるブランドもあります。
リカバリーウェアの広告で起用される櫻井翔さんや出川哲郎さんら有名タレントのイメージ
業界を賑わせる新規参入:大手から中国ブランドまで
このリカバリーウェア市場には、様々な新興ブランドが誕生し、加えてAOKI、青山商事、ワークマンなど大手企業も参入。Amazonなどのネット通販では国内新興企業だけでなく、多数の中国現地ブランドも出品されており、業界の期待感がうかがえます。出版社である宝島社までもが独自商品『リカバリープロ ラボ』を発売するなど、異業種からの参入も目立ち、消費者の選択肢は大きく広がっています。
厚労省が業者に「説明会」:誇大広告に厳重注意
市場の盛り上がりとともに効果を大げさに宣伝する業者が出たため、今年初めには厚労省が業者を集め説明会を開催しました。「定義から逸脱した標榜(ひょうぼう)が散見される」として、薬機法と医療機器の定義などの基礎を説明したと報道されています。特に、「腰痛など痛みや生理痛の症状改善、冷え性などの体質改善など定義を逸脱している製品も見られる」との指摘があり、これは大きく逸脱した表現だというわけです。このような注意喚起が行われるほど、商材としての売れ行きは活発だということになります。
謳われる効果と価格帯:消費者が感じる「胡散臭さ」の理由
「疲労軽減」の効力はどの程度か。いくつかの商品には「75~76%の人には効き目があります」と大きく書いてあります。これは一定効果を示唆しますが、約4分の1にあたる25%の人は効き目が感じられず、結構高確率です。自覚できる効果の確率が割と低めなことと、比較的高価格な商品が多いこと(バクネ上下2万円台、シックスパッド1万円台後半、リライブシャツレギンス1万円台半ばなど)が相まって、「胡散臭い」と感じる人も多いです。たかが寝間着や肌着に2万円台、1万円台を支払うのは勇気が要ります。対照的にAOKIは上下セット8990円、宝島社の『リカバリープロ ラボ』も8000円台~9000円台で販売されています。
リカバリーウェア市場は有名人起用や異業種参入で急速に拡大。しかし、一部の誇大広告に対する厚労省の注意喚起など課題も指摘されています。謳われる効果の体感率と価格帯が、消費者の間に一定の懐疑心を生む側面も。高い注目度とともに、効果の根拠や適切な情報提供が今後さらに重要になるでしょう。
Source: Yahoo!ニュース (オリジナル記事: FRIDAY)