ロシアのドローン攻撃、記録的な規模に急増

BBCニュース外交担当特派員、ポール・アダムス(キーウより)

ウクライナ各地の都市に対するロシアの大規模なドローン(無人機)攻撃が、著しく増加傾向にある。特に首都キーウへの攻撃は「新常態」と呼べる状況を生み出している。最近の6月9日夜から10日にかけての攻撃も、記録的な規模ではなかったものの、この新たな現実を象徴するものだった。真夜中を過ぎて数時間にわたり、キーウ上空を絶え間なくドローンが飛び交った。ドローンはほぼあらゆる方角から飛来し、探照灯が夜空を照らし出す中、街中に配備された防空部隊からオレンジ色の曳光弾が打ち上げられた。ドローンが接近するたびに響く重機関銃の低い発射音は、街の日常となった。遠くで燃え盛る炎や、迎撃成功あるいはドローン目標到達を示す大きな爆発音が響き渡るたびに、大局的な判断力を保つことの難しさを痛感させられる。

ロシアのドローン攻撃による夜間空爆後、炎と煙が立ち上るウクライナのキーウロシアのドローン攻撃による夜間空爆後、炎と煙が立ち上るウクライナのキーウ

ドローン攻撃の記録的な増加

公式声明では攻撃が常に「大規模」と表現されるが、統計データはドローン攻撃の疑いようのない急増を示している。前線から離れた地域におけるロシアの爆撃は、全面侵攻初期以降で最も継続的になっている。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、昨年7月までの3カ月間でロシアが発射したドローンは合計1100機だった。しかし、昨年8月には818機、9月には1410機、10月には2000機以上と、その数は急激に増加した。その後も増加は続き、今年5月には初めて4000機を超え、今月はさらにその記録を上回る勢いを見せている。ウクライナ空軍のデータによれば、ロシアは今月に入ってから、24時間あたり平均256発の飛翔体を発射しており、その大半はシャヘド型攻撃ドローンや、ウクライナの防空システムを混乱させるためのおとりドローンである。

ロシア国内での製造と技術改良

ロシアは2022年末にイランから提供されたシャヘド・ドローン(「殉教者」の意味)の使用を開始したが、2023年夏頃までには、中部タタールスタン共和国エラブガの経済特区で「ゲラン」と呼ばれる独自のシャヘド型ドローンの製造を始めた。ウクライナ保安庁(SBU)のアルテム・デフチャレンコ報道官によると、これまでにロシア国内で2万5000機のドローンが製造され、さらにイラン製部品を使って2万機が組み立てられたという。6月9日夜の攻撃で検知されたドローン315機のうち、実際に攻撃を仕掛けられるのは250機だったと、ウクライナ空軍のユーリ・イフナト報道官は述べている。イフナト報道官はウクライナメディアRBCに対し、「その大半はキーウを標的としていた」と語った。

キーウ市民が直面する「新常態」の影響

6月9日の攻撃では、ドローンに加えて計7発の弾道ミサイルと巡航ミサイルもキーウに向けて発射された。これは、長期間にわたり精神的な負担を強いられているキーウ市民にとって、またしても眠れない夜となった。「激しさを増している」と、キーウ在住のカティアさんは語る。「前はもっと、感情的に楽だった。なぜか今は、これまで以上にしんどくなっている」。ウクライナでの戦争における変化は、ロシアの攻撃強度だけではない。数百回もの夜間攻撃を経験してきたキーウ市民は、ロシアの戦闘能力向上、特に技術のわずかな変化を感じ取っている。カティアさんは「以前とは違う音のするドローンが増えている」と話している。SBUのデフチャレンコ報道官は、ロシアが継続的に改良を加えていると指摘し、「ロシアのエンジニアたちは、破壊力を強化し、破壊の規模と民間人の被害を最大化するよう命じられている」「加えて、ウクライナの防空システムに対するゲラン・ドローンの脆弱性を改善するよう、取り組んでいる」と説明している。

文化遺産への被害:聖ソフィア大聖堂

6月9日の空爆では、複数の集合住宅やオフィスビルなどが被害を受けた。キーウ政府は通常、軍事目標とみなされる可能性のあるものが損害を受けたかどうかについて言及を避ける傾向がある。しかし、ウクライナ文化省は声明で、キーウ市内の聖ソフィア大聖堂が初めて被害を受けたと発表した。ユネスコ世界遺産に登録されている聖ソフィア大聖堂は、11世紀に建てられたウクライナで最も重要な文化的・宗教的遺産の一つであり、壮大なモザイク画やフレスコ画で知られている。爆発の衝撃波により、大聖堂の東側ファサードの漆喰コーニスが損傷したが、内部に直接的な影響はなかったとされる。しかし、文化省は声明で「爆発で起きる振動は、構造物の健全性に重大な脅威をおよぼす可能性がある」と懸念を示している。

ドローン攻撃の規模と巧妙化が増す中で、キーウを含むウクライナの都市は新たな脅威に直面しており、市民生活だけでなく歴史的な文化遺産も危険に晒されている。

(BBCニュース、キーウより報告)


参照元:

  • BBC News
  • Yahoo News (元の記事のURL)