韓国で過熱する「身長ビジネス」 学歴・外見に続き新たな「スペック」に?

美容大国として知られる韓国で、いま若者やその保護者の間で「身長」への関心が急速に高まっています。学歴や職業、そして美容整形に代表される外見と同じく、身長が個人の価値や競争力を示す新たな「スペック」とみなされる傾向が強まり、「身長ビジネス」と呼ばれる市場が過熱しています。

「身長を伸ばす」クリニックや施設が人気

ソウル市内には、「成長」や「高身長」を冠したクリニックや運動施設が増加しています。特に注目されているのが、身長を伸ばすための様々なプログラムを提供する成長クリニックです。あるクリニックでは、上から吊るされたベルトを装着し、重力とは逆方向に体を引っ張る特殊な運動マシンが導入されています。このマシンでトレーニングする目的は、骨や関節への負担を軽減しつつ、成長を促進することにあると説明されています。

実際にクリニックに通う中学1年生の利用者は、「ここに通う前はほとんど背が伸びなかったけれど、通い始めてから1.5センチ以上伸びた」と効果を実感していると話しています。こうした施設の増加は、韓国社会における高身長への根強い希求を反映しています。

韓国の成長クリニックで、身長を伸ばすために重力と反対方向に体を引っ張る運動機器韓国の成長クリニックで、身長を伸ばすために重力と反対方向に体を引っ張る運動機器

「スペック」としての身長、日本との比較

韓国社会では、就職活動の面接などでも身長が高い方が好まれるという声があるように、身長が学歴や職業と並ぶ重要な「スペック」の一つと考えられ始めています。この背景には、韓国人の平均身長がこの数十年で大きく伸びている現状があります。

例えば、17歳男性の平均身長を比較すると、日本が過去50年間ほぼ横ばいであるのに対し、韓国は右肩上がりに伸び続け、現在では日本より7センチ以上高くなっています。こうした物理的な変化も、「高身長が良い」という社会的な価値観をさらに強化している要因と言えるでしょう。

高額な「成長ホルモン注射」への投資

成長ビジネスの中でも特に高額で、保護者の関心を集めているのが「成長ホルモン注射」です。ソウル市内の別のクリニックでは、1日に100人、1ヶ月に2000人もの患者を診察しており、その多くが身長に関する相談だといいます。

小学5年生の女の子は、成長自体に医学的な問題はないにも関わらず、自宅で毎日成長ホルモン注射を打っています。費用は月に6万円から7万円と高額ですが、父親はこれを子どもへの重要な「投資」だと捉えています。父親は「私自身も幼いころ背が低かったので、思春期にはどうしても背の高さと自信が比例してしまうと感じていた」「副作用は全くありません」と話し、子どもの将来のために必要な選択だと語っています。

専門家が警告するリスク

しかし、こうした身長ビジネス、特に成長ホルモン注射には専門家からの警告も出ています。大韓小児青少年病院協会の会長は、医学的な検査や正確な診断なしに安易に成長ホルモンを使用することの危険性を指摘しています。

専門家によれば、不適切な使用は「末端肥大症や骨の変形など、深刻な合併症を引き起こす可能性」があり、必ず医師の正確な診断と管理のもとで行われるべきだと強調しています。高身長への願望が強まる中で、医学的根拠に基づかない安易な施術や治療には注意が必要です。

まとめ

韓国で過熱する身長ビジネスは、学歴や外見に続く新たな「スペック」としての身長への社会的な注目度の高まりを背景にしています。成長クリニックでの運動療法から高額な成長ホルモン注射まで、様々なサービスが登場していますが、専門家は医学的なリスクについても警告しており、正確な情報と慎重な判断が求められています。

参照元:TBS NEWS DIG Powered by JNN