日本各地で企業が利用するサーバーやネットワーク機器などを収容する「データセンター(DC)」の建設が急速に進んでいます。特に千葉県印西市は「データセンター銀座」と呼ばれる日本有数の集積地です。本記事では、この印西市で実際に何が起こっているのか、その活況ぶりと、一方で見過ごされがちな側面について報告します。
印西市鹿黒地区の住宅街に立つ大型データセンター。**データセンター 建設**が住宅街にも及んでいる様子を示す。
灰色の雲が低く垂れ込めるある日、記者は千葉ニュータウン中央駅に降りました。駅前には大型商業施設や高層マンションが立ち並び、一見すると一般的な新興住宅地の光景です。しかし、駅東側に広がる約1万㎡の広大な駐車場は封鎖され、不気味な空き地となっていました。ここから街の様相は一変します。
駅から北東へわずか5分ほど歩くと、突如として窓のない巨大なビル群が現れます。これこそが、世界の膨大なデータが集まるデータセンターです。外観は無機質で人の気配はなく、高い塀に囲まれ、出入り口には警備員が立つ厳重な体制が敷かれています。
この一帯は印西市大塚地区、通称「ビジネスモール」と呼ばれるDC集積エリアです。その入り口には高さ100mの「三井住友海上・千葉ニュータウンセンター」がそびえ立ちます。その奥には、金属質の球体構造物と無表情なビルが特徴的な「みずほ銀行」のDC、そして隣接して「商工中金」のDCが並びます。さらに奥にも、装飾性を排した物流倉庫のようなDCが多数連なり、現在も複数の建物が建設中です。
地元の不動産関係者は、印西市内には3つのDC集積エリアがある中で、大塚地区が最も早く開発が進んだと指摘します。かつては研修センターやオフィスビルが混在していましたが、今ではDC一色に様変わりしました。ある企業の研修施設がDCに建て替えられた例もあり、1996年に三和銀行(現三菱UFJ銀行)が建てた高さ90mの高層ビルも近く解体され、DCになる予定だといいます。
印西市にあるグーグルのデータセンターの外観。巨大な**ITインフラ**施設。
夕刻になると、各DCから数人が姿を現し始めました。窓のない巨大な「箱」の中で一体何が行われているのか、何人かに話を聞いてみましたが、応じてくれたのはいずれも日本語が堪能な外国人でした。しかし、彼らは皆一様に「守秘義務があるので」と口を閉ざし、詳細を知ることはできませんでした。
データセンターは、企業が必要とするサーバーやネットワーク機器などを安全に管理・運用するための重要な施設です。印西市でのDC建設ラッシュは、デジタル化の加速に伴うITインフラ需要の高まりを背景としています。街の景観を変え、新たな産業集積をもたらす一方で、その内部は一般には知られることなく、地域住民にとっては騒音や電磁波への懸念(記事冒頭の画像キャプションにあるように、現時点で大きな問題は報告されていない)や、街の機能の一部がベールに包まれたまま進んでいるという「歪み」も内包していると言えるでしょう。印西市は、日本のデジタル基盤を支える最前線でありながら、その実像は依然として神秘に包まれています。