NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。その波瀾万丈な生涯が描かれて話題になっている。第22回「小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて」では、筆を折ることを決めた戯作者で絵師の恋川春町が、蔦重からの執筆依頼を拒む。一方、田沼意次の息子・意知(おきとも)は蝦夷地の調査を進めようとするが……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
■ 花魁「誰袖」を大金で身請けした人物
今回の放送では、福原遥演じる誰袖(だれそで)花魁がキーパーソンとなった。
蔦重にべたべたしては身請け(客が遊女の身代金を肩代わりし、自分の妻や妾にすること)をねだってきた誰袖だったが、田沼意次の息子・意知に一目ぼれすると、アプローチ先を変更。意知に近づいていき、松前藩の「抜荷(ぬけに)」、つまり、密輸を証明する代わりに身請けしてほしい、などと言い出した。
前回の放送では、蝦夷地の開発をもくろむ田沼意次が、蝦夷に領地を持つ松前藩から上知(あげち:領地を召し上げること)を行おうとした。だが、強引なやり方を危惧した息子の意知が、父に「待った」をかけている。意知が「私が上知の理由に使えそうなものを調べてみます」と父を説得する場面があった。
松前藩がひそかにロシア人と接触して、幕府のあずかり知らぬところで、物資のやりとりをしていることが分かれば、上知を行う格好の理由となる。そんな意知の状況を知った誰袖が、自身がスパイになることを提案。その見返りに身請けしてほしい、と言い出したのである。
不審に思った意知が「なにゆえ、左様に私の身請けを望む? 吉原を出たいというなら土山(つちやま:詳細は後述)にねだったほうがよほど早かろう」と問うと、誰袖花魁は「わっちは…吉原一の二枚目好みにござんして」と言って意知を押し倒すと、さらに「このお顔を日がな一日眺めて過ごす身となりたいのでござりんす」とうっとり。意知が条件をのんだため、ここから誰袖が動き出すことになりそうだ。
この誰袖は実在する花魁で、鳥山検校(とりやま けんぎょう)に身請けされた瀬川と同様に、大金で身請けされたことで話題となった。相手は、意知が名前を出した土山宗次郎である。