ヨークベニマル、政府備蓄米を静かに販売開始 福島など5県で順次拡大

大手スーパーのヨークベニマル(本社・福島県郡山市)は6月12日、政府備蓄米の販売を郡山市内の横塚店で開始しました。この動きは、首都圏などで備蓄米を求める客が長い列を作る中、混乱を避けるための独自の戦略として注目されます。来週からは、福島、宮城、山形、栃木、茨城の東北・北関東エリアにある全250店舗に販売を拡大する予定ですが、事前の告知は行わない方針です。

横塚店の入り口には、午前9時半の開店と同時に、2022年産5キロ入りの備蓄米約1千袋が積み上げられました。価格は税込み2160円です。店員が「備蓄米が入荷しました」と呼びかけましたが、当初は素通りする客も少なくありませんでした。しかし、次第に備蓄米を手に取る客が増え、午後4時12分には完売しました。

福島県郡山市のヨークベニマル店舗で、スタッフが買い物客に政府備蓄米を手渡す様子。静かに販売が開始された初日の光景。福島県郡山市のヨークベニマル店舗で、スタッフが買い物客に政府備蓄米を手渡す様子。静かに販売が開始された初日の光景。

■ 混乱回避のための「事前告知なし」戦略

首都圏の一部スーパーでは、政府備蓄米の販売が開店前から長蛇の列を生むなど、大きな反響を呼んでいます。ヨークベニマルは、このような「何時間も待たせる状況は申し訳ない」との考えから、事前告知を行わないことを決定しました。従業員にはこの件に関する箝口令(かんこうれい)を敷き、報道機関への連絡も販売開始当日の開店後に行うという徹底ぶりです。

たまたまサンドイッチ用のパンを買いに来て備蓄米に気づいたという鈴木淑子さん(77)は、「前々から買いたいとは思っていたが、ニュースを見て無理だとあきらめていた。ラッキーでした」と喜びを語りました。多くの消費者が備蓄米の入手を諦めかけている中で、予期せぬ形での販売に喜ぶ声も聞かれました。

■ 政府備蓄米の調達量と今後の見通し

ヨークベニマルが随意契約で政府から調達した備蓄米は合計1500トンに及びます。これを精米すると、5キロ入りに換算して約24万袋相当になると見られています。精米の進捗状況が予測困難なため、今後も販売に関する事前の告知やチラシへの掲載は行わない方針が続いています。

■ 他社スーパーでも進む備蓄米販売

政府備蓄米の販売は、他の主要スーパーでも進められています。リオン・ドール(本社・会津若松市)では、6月7日に会津若松市内の2店舗で先行販売を実施しました。6月13日からは、会津地方と中通りの11店舗に加え、新潟県と栃木県の15店舗でも販売を開始する予定です。価格は5キロ入り税込み2139円です。また、マルト(本社・いわき市)も、6月6日にいわき市内の1店舗で先行販売を行い、来週からは、いわき市内と茨城県内の計約30店舗で週に2〜3日程度販売する計画です。こちらの価格も5キロ入り税込み2139円となっています。

備蓄米の市場投入は、コメの安定供給への懸念や物価高への対応策として注目されており、各スーパーがそれぞれの販売戦略で消費者のニーズに応えようとしています。

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