路上生活者支援シェルターで20年ぶり再会 ブラジル母娘の奇跡

ブラジルの路上生活者支援シェルターで、互いの素性を知らずに友情を育んでいた二人の女性がいた。その友情の裏には、20年もの間離れ離れになっていた母娘の切実な物語が隠されていたことが明らかになり、多くの人々の感動を呼んでいる。この心温まる再会は、12日付のブラジルメディアG1などが報じた。

路上生活者支援施設での「偶然」の出会い

奇跡の再会を果たしたのは、サンパウロ州カンピーナス市にある路上生活者支援シェルターを利用していたクリスチアネ・ドゥアルテ・ダ・シルヴァさん(41歳)と、ヴィトリア・ドゥアルテ・マシャードさん(21歳)だ。クリスチアネさんは約20年前からこの施設を断続的に利用しており、一方、ヴィトリアさんはわずか2カ月前に入所したばかりだった。ある日、ヴィトリアさんが「私の母の名前もクリスチアネなんです」と話したことをきっかけに、二人は親しくなり、打ち解けた関係を築いていった。この「偶然」とも思える出会いが、後に信じがたい真実へと繋がるとは、その時は誰も想像していなかった。

ブラジルの路上生活者支援シェルターで20年ぶりに再会を果たした母クリスチアネさん(左)と娘ヴィトリアさん(右)ブラジルの路上生活者支援シェルターで20年ぶりに再会を果たした母クリスチアネさん(左)と娘ヴィトリアさん(右)

20年の空白:母クリスチアネさんの苦難

母であるクリスチアネさんの人生は苦難の連続だった。継父からの性的虐待未遂を機に家を飛び出し、母親からの理解も得られず、路上での生活を余儀なくされた。路上での日々は、飢えや寒さ、そして常に付きまとう恐怖との闘いだった。さらに、社会からの偏見や無関心にも苦しみ、「時にはゴミを投げつけられることもあった」と当時の辛い経験を振り返る。その後、ある男性との出会いを経てヴィトリアさんを出産したが、薬物問題や家庭内の不和といった複雑な事情が重なり孤立し、幼いヴィトリアさんと引き離されてしまった。それ以来、クリスチアネさんは娘の安否を案じ続け、夜眠るたびに娘が安全にご飯を食べられているか、誰かに虐げられていないかと心配でならなかったという。娘を探し、何度も手紙を送ったが、返事を受け取ることはなかった。

テレビが繋いだ奇跡の再会

二人の隠された関係が明るみに出たのは、EPTV局が路上生活者向けの職業訓練コースの卒業式を報じたことがきっかけとなった。今月6日に行われた第一期生の卒業式では、参加者たちがガウンに身を包み、学位証書を手に労働市場への再挑戦を誓い合った。クリスチアネさんも卒業生の一人として式に参加しており、その際、感極まって涙する姿がテレビで放送されたのだ。

その放送を見たヴィトリアさんの叔父が、テレビに映った映像や写真をヴィトリアさんに送り、「お前の母親がここにいる」と知らせた。叔父からの連絡に驚いたヴィトリアさんは、実の母親がまさか自分と同じシェルターにいるとは思いもよらなかった。急いで母親に会いに向かい、「写真を撮って叔父に見せたら『間違いない』と言われた」と、当時の信じられないような気持ちを語った。かくして、20年もの歳月を経て、母と娘は運命的な再会を果たしたのである。

新たな希望へ:卒業、そして家族の絆

母クリスチアネさんは、製菓、情報処理、電気工事の3つの講座を無事に修了し、就労支援として必要な器具一式を受け取った。職業訓練コースで学んだ技術ももちろん大きな成果だが、クリスチアネさんにとって、このコースを通じて得た何よりも大きな「プレゼント」は、生き別れていた実の娘ヴィトリアさんとの再会だった。

クリスチアネさんにはヴィトリアさんの他にも2人の子どもがおり、いつか家族全員が再び一つになる日を心から願っている。彼女は「路上生活から抜け出し、一生懸命働いて、安心して暮らせる自分の場所を持ちたい」と、今後の人生への希望を語っている。この母娘の物語は、困難な状況下でも決して希望を失わず、家族の絆を求める人々の心に深く響いている。

[Source link] (https://news.yahoo.co.jp/articles/4ad76222d690ba23b0f34d83599e40bd69b05370)