フィリピンの首都マニラで日本人男性2人が銃殺される衝撃的な事件が発生し、その首謀者が日本国内にいる日本人と見られていることから、現地の治安に対する関心がにわかに高まっています。1300万人を超える人口を擁するマニラは、美しい歴史的建造物が並ぶ一方で、旅行者や在住者が注意すべき危険も潜んでいます。本稿では、マニラの治安の現状、日本人を狙った凶悪犯罪の実態、そして専門家が語る安全対策について詳しく解説します。
マニラの高層ビル群と活気ある街並み、フィリピンの首都の多様な側面を示す風景
マニラ:美しい歴史的建造物と隠れた危険
マニラは1571年創建のマニラ大聖堂や、150年かけて建造されたサンチャゴ要塞など、荘厳で美しい歴史的建造物が点在する魅力的な都市です。Googleストリートビューの「達人」である吉田喜彦氏も、その緻密な彫刻や壮大な雰囲気を高く評価しています。しかし、その美しい景観の裏側には、常に注意を要する一面が存在します。
かつてのドゥテルテ大統領は、新型コロナウイルス対策時に「過激な行動を取れば容赦なく射殺する」と公言するなど、強硬な姿勢を示してきました。フィリピンでは許可を得れば銃の所持が認められている一方で、未登録の違法な銃器が広く出回っており、社会全体に銃が蔓延している「銃社会」としての側面が治安を複雑にしています。
日本人狙いの凶悪事件の増加:データと生の声
マニラでは、日本人が凶悪犯罪の被害に遭うケースが報告されています。2024年6月には、マニラ市内で日本人が経営する焼き鳥店が拳銃強盗の被害に遭いました。店主は「目出し帽の強盗に銃を突きつけられ、生きた心地がしなかった」と当時の恐怖を語り、事件後、客足が3~4割減少したと明かしています。日本大使館の報告によると、2024年10月以降、日本人が被害に遭った拳銃強盗事件はすでに21件に上るとのことです。
専門家が語るマニラの「危険な顔」と「真実」
マニラの治安について、現地を熟知する専門家たちは多角的な視点を提供しています。「まにら新聞」の中村浩久編集局長は、違法銃器の蔓延が凶悪な武器を容易に入手できる環境を生み出していると指摘します。しかし、警察の捜査体制は改善されており、かつてのような「凶悪事件を起こしても捕まりにくい」状況は変わりつつあると説明しています。
フィリピンに19年住む不動産デベロッパーのRAM Homes Allied Services Inc.桐原隆社長は、マニラの危険な地区としてマラテを挙げ、「日本でいう新宿の歌舞伎町のような場所。周辺にスラムも点在し、アクセスしやすい」と警告します。マラテへの出入りを避ければ、トラブルはほとんどないだろうとも語っています。また、世界の危険地帯を旅する人気YouTuber「EXIT JACK」マンペー氏は、ストリートチルドレンによるスリや、レディーボーイによる窃盗の被害経験を語り、特に夜のマカティ地区(多くの日本人が住む繁華街)では、観光客や日本人を狙った犯罪が多いと注意を促しています。マンペー氏はマニラの危険度を「東南アジアではトップクラス、南米の危険な繁華街並みの殺伐とした空気」と評しつつも、「ちゃんとした店がほとんどで、ごく少数の悪質な人々が問題を起こしている」との見解を示しています。
「ルフィ事件」でフィリピンが特殊詐欺の拠点となったことについても、桐原社長は「フィリピン人は、あくまで日本で起きている事件の舞台としてフィリピンが使われたという認識」と現地の視点を紹介しています。中村編集局長は、強盗事件は増加傾向にあるものの、殺人事件に限れば2000年当初の年間平均7人から大幅に改善されており、長期的には凶悪犯罪は減少傾向にあると分析しています。自身の27年間の在住経験でも身の危険を感じたことはないといい、デパートや金融機関に銃を持った警備員がいるのが当たり前の「銃社会」においては、日本とは異なる恐怖心があるとも語っています。
マニラ訪問時の必須安全対策
マニラを訪れる際は、以下の安全対策を徹底することが重要です。
- 強盗に遭遇した場合: 万が一の事態に備え、絶対に逆らわないことが第一です。犯人が本物の拳銃を持っている可能性が高く、抵抗したり逃げ出したりすると撃たれる危険性が高まります。日本大使館も「絶対に逆らわず、金品を渡して済ませる」よう呼びかけています。
- 貴重品の管理: ホテルにチェックイン後、パスポートなどの重要書類の原本はホテルのセーフティボックスに預け、外出時はコピーを持ち歩くなどの自衛策が必要です。
- 移動手段: 都市部では配車アプリを利用するのが最も安全です。登録されたドライバーが運転するため信頼性が高く、スマホがない場合はホテルや空港で客待ちをしているタクシーを利用しましょう。流しのタクシーは避けるべきです。
- 通貨事情: ほとんどが現金決済ですが、近年は電子マネーも増えつつあります。主要な施設では携帯電話をかざして決済できる場所もありますが、依然として現金が主流であることを理解しておく必要があります。
フィリピンの魅力:陽気な人々ともてなしの心
多くの危険性について触れてきましたが、フィリピンにはその一方で、素晴らしい魅力も数多く存在します。国民は明るく陽気で、困っている人には親切にしてくれる人柄が大きな魅力です。冬がなく温暖な気候は、特に高齢者にとっては快適な環境と言えるでしょう。これらの魅力を享受するためにも、適切な安全対策を講じることが肝要です。
参照
- 『ABEMA的ニュースショー』(ABEMA TIMES編集部)
- Yahoo!ニュース (記事元リンク: https://news.yahoo.co.jp/articles/8f3bf8c2f10aa5944cc42ee60c8e33327407a27d)