東京都の私立中学、男女別学と共学化の波:男子校に高まる人気の背景

皆さんは学校選びにおいて、共学校と男女別学校のどちらを検討されるでしょうか。全国的に見ると男女別学校は少数派になりつつありますが、こと東京都の私立中学校においては事情が異なります。近年、多くの私立校で共学化が進む一方で、特に男子校の人気が再燃し、激しい競争が展開されています。

文部科学省が2024年に実施した学校基本調査によると、全国の高等学校4774校のうち、男子校はわずか92校(1.93%)、女子校は266校(5.57%)にとどまります。これは高校全体の約13校に1校という計算になります。

一方、東京都の私立中学校に焦点を当てると、状況は一変します。東京都生活文化スポーツ局が2024年4月に公開した資料「東京都の私学行政」によれば、都内の私立中学校183校のうち、男子校は31校(16.9%)、女子校は65校(35.5%)を占め、男女別学校が半数(52.4%)を超えています。全国平均と比較して、東京都の私立中学校における男女別学の割合がいかに高いかが分かります。

しかし、その東京都においても、近年は男女別学校の減少傾向が顕著であり、共学化の流れが加速しています。現在、難関共学校として知られる学校の多く、例えば早稲田実業学校、渋谷教育学園渋谷、明治大学明治、中央大学附属、法政大学、広尾学園、広尾学園小石川、開智日本橋、東京都市大学等々力などは、かつては男女別学校でした。

この共学化の背景には、男女共同参画社会の理念が広がる現代において、「男女別学は時代に逆行している」という社会的な見方が影響していると考えられます。「社会は男女で構成されている以上、多感な中高時代は男女が共に学ぶ環境が望ましい」という価値観が強まり、一時期、男女別学校の受験者が全体的に減少しました。学校存続の危機感から、多くの学校が共学化へと舵を切ったのです。

私立中学校のキャンパスを歩く学生たちのイメージ写真私立中学校のキャンパスを歩く学生たちのイメージ写真

では、男女別学校は社会的な使命を終えようとしているのでしょうか?そうとは言えません。実際、ここ数年は男女別学の人気が再び高まっており、特に数が少ない男子校においては「需要過多」の状況が生まれ、入試における競争が激化しています。

男女別学が再び注目されるようになった要因は何でしょうか。その魅力として挙げられるのは、「性差から解放される」独自の環境です。男女混合の環境では、異性の目を意識したり、性別による役割分担を無意識のうちに行ったりすることがありますが、同性のみの環境ではそうした制約から自由になれる側面があります。

ある女子校出身者は、「共学では外見や元気さで目立つ人が中心になりがちですが、女子校ではその人が『面白い人物であること』がより評価されます」と証言します。また、「『女だから』という言い訳が通用しない環境で過ごすと、大学入学後に男子に荷物を持ってもらうといった光景に違和感を覚えることがあります」と、自立心や性別にとらわれない意識が育まれることを示唆しています。男子校においても同様に、性別による固定観念にとらわれず、多様な個性や才能を発揮しやすい環境があると言えるでしょう。このような環境は、生徒たちが自分自身の内面や興味に深く向き合い、特定のジェンダー役割に縛られることなく成長できる機会を提供しています。その結果、同性間での濃密な人間関係が築かれやすく、生涯にわたる友情やネットワークが形成されることも男女別学の大きな魅力の一つです。

結論として、東京都の私立中学校においては、時代の流れを受けて共学化が進む一方で、男女別学校、とりわけ男子校が持つ独自の教育環境や「性差から解放される」魅力が再評価され、再び高い人気を集めています。これは、多様な教育ニーズに応える日本の私学教育の一つの現れと言えるでしょう。

Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/9046e82f1f398c7bb408f4df93ad3774f584ec9a