特定抗争指定暴力団山口組傘下の一心会会長、飯塚恵容疑者が、匿名・流動型犯罪グループ、通称「トクリュウ」のメンバーを集めて男性を強迫した疑いで大阪府警に逮捕されました。この逮捕は、近年の日本のヤクザ社会と、実態不明な新興犯罪グループ「トクリュウ」との間で深まる関係性に改めて光を当てています。
事件の詳細と「トクリュウ」の関与
事件は6月3日、大阪ミナミの路上で発生しました。飯塚容疑者は、客引きをしていた20代男性に対し、「わしは一心会の飯塚じゃ、俺のこと知らんのか」と名乗り、その場での客引き行為を止めさせようと因縁をつけたとされています。さらに、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)のメンバーらを招集し、「殺したれ」「絶対に逃がしたがあかんぞ」と指示した疑いが持たれています。
大阪ミナミの路上、ヤクザ幹部が「トクリュウ」メンバーを使い客引きを脅迫した事件を報じる写真
関係者によると、一心会はトクリュウの用心棒的な役割を担っており、今回の強迫事件もその関係性が背景にあると見られています。
ヤクザと後続世代の犯罪グループ:歴史的変遷
元刑事は、このヤクザとトクリュウの関係性を、過去の時代に存在した犯罪グループと比較して説明します。「トクリュウという名称は、ヤクザと彼らの関係性を分かりにくくしている。昭和の時代で言えば、拠点にする地元のシマ内でチンピラグループや暴走族の用心棒をしていたようなものだ」と述べます。
さらに、「平成の時代では、中国残留孤児2世を中心とした怒羅権や関東連合といった半グレ集団のケツモチ(後見役)をヤクザが担っていたことに当たる。令和になって、それがトクリュウになった」と指摘。過去の暴走族や怒羅権は、比較的結束が強く、警察やヤクザもある程度メンバーの実態を把握できたと言います。
「トクリュウ」の匿名性と実態把握の難しさ
しかし、元刑事は「トクリュウ」の最大の特徴である匿名性と流動性が、従来の犯罪グループとは異なる実態把握の難しさにつながっていることを強調します。「令和になって登場したトクリュウは、実態の把握が非常に難しい。今回、組長がトクリュウを参集できたということは、メンバー間で連絡を取り合えるある種の犯罪グループだったということだろう」と分析。
匿名性が高く、特定の拠点や明確なリーダーを持たないことが多い「トクリュウ」は、従来の組織犯罪対策の枠組みでは捉えにくい新たな脅威として浮上しています。
結論
今回の山口組系組織会長の逮捕は、ヤクザが新たな匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」を犯罪行為に利用している現状を明確に示しました。時代の変化と共に犯罪組織の関係性も変遷しており、匿名性の高いトクリュウへの対策は、日本の治安維持における喫緊の課題と言えるでしょう。この事件は、伝統的な暴力団と現代の匿名犯罪グループがどのように結びつき、社会に影響を与えているのかを考える上で重要な事例となります。