米中貿易摩擦:中国の食卓に異変?スーパーから米国産牛肉が消え、豪州産へシフトの現実

中国在住のカナダ人女性が投稿した一本の動画が、米中貿易摩擦が中国国内の消費者の日常に与える具体的な影響を映し出し、大きな注目を集めています。ドナルド・トランプ前米政権下で激化した「関税戦争」は、現地の人々の食料品購入にどのような変化をもたらしたのでしょうか。この動画は、中国のスーパーでの牛肉購入体験を通じて、関税引き上げの現実をレポートしています。

米中貿易摩擦の原因となった関税政策を進めたドナルド・トランプ米大統領米中貿易摩擦の原因となった関税政策を進めたドナルド・トランプ米大統領

米国産牛肉が棚から消えた日

動画を投稿したのは、中国に住むカナダ人のエミリーさんです。彼女が夕食のためにスーパーで牛肉を探していたところ、以前は並んでいたはずの米国産牛肉が姿を消していることに気づきました。

牛肉のパックにはっきりと記されていたのは、「澳洲(=豪州)」の文字。売り場全体を見渡しても、米国産牛肉は一切見当たらなかったといいます。エミリーさんはこの光景から、「中国は米国から牛肉を買うのをやめ、オーストラリア産に切り替えたのだと思われます」と状況を分析しました。

データが示す中国の輸入元シフト

エミリーさんのスーパーでの体験は、より広範な貿易データの動きとも一致する側面があります。中国の貿易構造は、必ずしも米国に大きく依存しているわけではありません。

米国農務省(USDA)の2024年のデータによると、米国は年間15億8000万ドル(約2300億円)相当の牛肉を中国に輸出しています。しかし、経済情報を提供するウェブサイトTrading Economicsの2023年のデータでは、中国の輸入総額全体に占める米国の割合はわずか7%に過ぎません。一方、米国の輸入総額に占める中国の割合は2024年で14%となっています。

さらに、ロイター通信は2022年に、米国がかつて中国にとって最大の輸出国であった大豆も、今ではブラジルにその地位を譲っていると報じています。これらのデータは、中国が貿易相手国を多角化し、代替の供給元を見つける能力があることを示唆しています。

関税がもたらした消費者への影響(動画投稿者の視点)

エミリーさんは結局、その日の夕食にオーストラリア産牛肉を購入しました。彼女は動画の中で、自身の正直な感想として「正直に言って品質的にもオーストラリア産のほうが信頼できます」と述べています。

そして、米中関税が中国に与えた影響について、彼女は自身の見解を述べました。「中国は関税で苦しんでいるというよりも、むしろより良い価格でより良い品質のものが手に入っているため、状況は好転していると思います」と結論づけ、動画を「ありがとうトランプ!」という皮肉を込めた言葉で締めくくりました。

まとめ

中国在住のカナダ人女性が捉えたスーパーでの日常的な一コマは、米中貿易摩擦という国際的な政治経済の動きが、人々の食卓や商品の選択肢に具体的な変化をもたらしている現実を示しています。米国産牛肉が消え、オーストラリア産に置き換わっていたというこの事例は、中国が特定の国への貿易依存度を下げ、代替供給元からの輸入を増やしている可能性を示唆しています。動画投稿者は、この変化が消費者にとって必ずしもマイナスではない、むしろより良い選択肢をもたらしている可能性もあると見ています。

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