イスラエル軍によるイラン国内の核施設への空爆が13日に行われ、その被害状況が少しずつ明らかになってきた。イスラエルはイランの核兵器開発能力を削ぐことを狙ったとされるが、その目的はどの程度果たされたのだろうか。イランは核開発を「平和目的」と主張する一方、核兵器級に近い高濃縮ウランを保有しており、その動向は国際社会の懸念事項となっている。今回のイスラエルによるイラン核施設への空爆が、被害と核開発に与える影響を探る。
ナタンツ核施設の被害状況
イランの主要な核施設は、ナタンツ、フォルドゥ、イスファハンなど国内各地に分散している。イスラエル攻撃で主要標的となったのは中部ナタンツだ。ここには地上と地下にウラン濃縮施設があり、地下施設では主に濃縮度5%までの作業が行われ、1万基以上の遠心分離機が稼働していたとされる。一方、地上にあるパイロット濃縮施設(PFEP)は、新型分離機の試験運用や、濃縮度60%までの高濃縮ウラン製造に使われ、数百基が稼働とみられる。
イラン中部ナタンツの核施設衛星画像
イラン原子力庁は13日、ナタンツでの被害は「表面的な損傷」にとどまり、人的被害もなかったと発表した。しかし、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は同日、地上にあったPFEPが破壊され、電力供給施設や非常用電源も損壊したことを明らかにした。地下施設については、物理的な攻撃の兆候はないものの、電源喪失により遠心分離機が損傷した可能性があると指摘している。施設内では放射能汚染も確認されたが外部漏洩はなく、IAEAは「適切な措置で管理可能」とした。
フォルドゥとイスファハンの被害報告
イランでは、フォルドゥのウラン濃縮施設や、ウラン転換施設があるイスファハンも標的になったとされる。イラン原子力庁はこれらの施設についても「限定的な被害」だと述べた。一方、米CNNやロイター通信は「目に見える被害はない」との専門家の見方を伝えた。
しかし、IAEAは14日、イスファハンでは攻撃によりウラン転換施設を含む重要な建物4棟が損壊したと明らかにした。被害の詳細は不明だが、外部での放射線レベルの上昇は観測されていない。フォルドゥに関しては、IAEAは被害を確認していないとしている。
地下施設攻撃の困難さとイスラエルの狙い
核施設の多くは地下深くに建設されており、地中貫通弾など特殊な兵器を用いない限り、空爆で直接的な被害を与えるのは難しいとされる。イスラエル軍は今回の攻撃でイランの多くの防空システムを破壊したと発表している。現段階では、イスラエルは将来的な核関連施設への直接攻撃に備え、周辺の防空網の無力化に重点を置いた可能性も指摘されている。
情報源として、イラン原子力庁、国際原子力機関(IAEA)、米CNN、ロイター通信などが報じた内容を参照しています。