イラン、イスラエル衝突 停戦仲介を拒否し応酬長期化の様相

【テヘラン=吉形祐司、カイロ=田尾茂樹】ロイター通信は、イスラエルと交戦を続けるイランが、カタールとオマーンによる停戦仲介の試みを拒否したと報じました。関係筋が15日、同通信に対し明らかにしたものです。イランは、イスラエル側が攻撃を継続する限り、これ以上の交渉には応じないとの姿勢を示しています。両国間の軍事的な応酬は長期化の様相を呈しており、双方の民間人に多数の犠牲者が出る懸念が高まっています。これを受け、イランの首都テヘランからは、多くの市民が安全な場所を求め脱出を始めています。

衝突激化と相互の警告

イスラエル軍は15日、イラン国内の武器製造施設付近に居住する民間人に対し、「命の危険にさらされる可能性がある」として、イラン国民としては初めてとなる退避勧告を発令しました。これは、イスラエルが標的とする軍事関連施設周辺の民間人への影響を考慮した異例の措置とみられます。一方、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は16日、自身のX(旧ツイッター)アカウントに、「テヘランの住民を意図的に傷つけるつもりはない」と投稿しましたが、同時にイランへの攻撃をためらわない強い姿勢も改めて示しました。

これに対し、イラン軍もまた15日、イスラエル国民に対し、軍関連施設や重要施設に不用意に近づかないよう警告を発しました。これは、イラン側も報復攻撃を行う可能性を示唆するとともに、両国ともに、今後の軍事行動において民間人の犠牲を伴う可能性を想定している現状が浮き彫りになっています。

民間生活への影響拡大

テヘラン北部では15日、イスラエル軍によるとみられる攻撃により給水施設が破壊され、一帯が断水するという事態が発生しました。市内に住むある女性は、地元のメディアに対し「家の周辺で爆撃音が鳴りやまず、もうこれ以上は耐えられない」と窮状を訴えました。この女性は15日中にテヘランからの脱出を試みたものの、退避しようとする多数の車両で幹線道路が大渋滞し、街を出ることができたのは16日朝になってからだったといいます。

イスラエル軍攻撃後のテヘラン郊外の石油貯蔵施設から立ち上る黒煙、イラン・イスラエル衝突の影響イスラエル軍攻撃後のテヘラン郊外の石油貯蔵施設から立ち上る黒煙、イラン・イスラエル衝突の影響

また、イラン外務省の報道官は16日の記者会見で、イスラエルによる攻撃によってテヘラン市内の外国大使館の建物の一部にも損害が出たと明らかにしました。さらに、イラン学生通信(ISNA)の報道によると、西部ケルマンシャー州では16日に病院が攻撃を受け、入院中の患者が負傷するという痛ましい事態も発生しています。これらの事例は、軍事衝突が民間インフラや非戦闘員にも深刻な影響を与えている現状を示しています。

今後の展望

イランが停戦仲介を拒否し、イスラエルも攻撃継続の姿勢を崩さないことから、両国間の軍事的な応酬は当面収束する兆しが見えません。双方による民間人への警告発令や、インフラ・医療施設への攻撃が報じられるなど、衝突は新たな段階に入りつつあります。このまま事態が推移すれば、更なる民間人犠牲者の増加や、広範な地域への影響が懸念され、国際社会のより強力な介入が必要となる可能性があります。

【参考文献】

  • ロイター通信 報道 (日付不明)
  • イスラエル国防相 イスラエル・カッツ氏 X投稿 (2025年6月16日)
  • イラン学生通信(ISNA)報道 (2025年6月16日)
  • イラン外務省記者会見 (2025年6月16日)
  • 現地住民への取材 (日付不明)