部屋の片付けで貯蓄が劇的に増える理由:ミニマリストの視点から見る家計改善術

普段、多くのモノに囲まれて生活していますが、その中には気づかないうちに積み重なった「無駄遣い」が数多く含まれています。ミニマリストである著者Takeru氏は、これらの無駄なモノを手放し、部屋を徹底的に片付けたことで、貯蓄スピードが驚くほど向上したと述べています。この変化は、単に部屋がきれいになる以上の、家計や消費行動に対する深い影響をもたらします。本稿では、このミニマリスト視点からの家計改善の過程と、どのようにして部屋の片付けが貯蓄に繋がるのかを詳しく解説します。

不用品を売却し、少ないモノで生きられることを発見

貯蓄を増やしたいと考えたとき、最初に取り組むべきは家にある「不用品」の整理です。ミニマリストTakeru氏が最初に専念したのは、まさにこの不用品の売却でした。生活が困窮していた時期、彼は不用品を売ることで日々の生活費を補填しました。あなたの家にも、今は使っていないけれど価値のあるモノがあるはずです。例えば、貴金属、使わない家具や家電、古いパソコンやスマートフォン、ブランド品、着なくなった洋服や和服、読み終わった本、CDやゲームソフト、使われなくなった子どものおもちゃやベビー用品、腕時計、ジュエリー、趣味で集めたコレクションなど、多岐にわたります。

こうした不用品をフリマアプリや買取サービスなどを通じて売却することで、予想外の臨時収入を得ることができます。Takeru氏はミニマリスト生活を10年間続ける中で、不用品売却によっておよそ100万円もの現金を手にすることができたと言います。

片付けによる節約効果を示す貯金のイメージ片付けによる節約効果を示す貯金のイメージ

片付けを進める過程で、彼は自身が所有していたモノのほぼ9割が実は不用品であり、本当に生活に必要なモノはたった1割だったという驚くべき事実に気づきました。この「少ないモノだけでも十分に生活できる」という発見が、彼のその後の消費行動と貯蓄に大きな影響を与えました。自分にとって本当に必要なモノが明確になったことで、彼は物欲が激減し、買い物をするときに非常に慎重になりました。一年もたたずに手放すようなモノや、再び片付けの手間が増えるようなモノは買いたくなくなったのです。その結果、家に残るのは本当に質の高い、長く愛用できるモノだけになり、必要以上にモノが増えることもなくなりました。

「必要なモノ」と「欲しいモノ」を区別する力

片付けを通じて、ミニマリストは自分にとって何が「必要なモノ」で、何がなくても困らない「欲しいモノ」なのかを明確に区別できるようになります。「必要なモノ」とは、日々の生活を送る上で欠かせず、それがなければ不便を感じたり、生活に支障をきたしたりするモノです。

例えば、Takeru氏が自身の生活に最低限必要だと考えるモノのリストは具体的です。家具はイス1脚とテーブル1つ、家電はエアコン、冷蔵庫、乾燥機付き洗濯機、照明、掃除機の5点。寝具は敷布団、掛け布団、枕、毛布、夏用冷感パッドの5点。衣類は服10着、ハンガー10本、肌着12点。その他、歯ブラシ1本、スマートフォン1台とそのケース、iPad1台、三脚1本、イヤホン1つ、充電ケーブル2本、ペン1本、リュック1つ、靴1足、傘1本、爪切りや耳かきなどの衛生用品5点、タオル3枚、茶碗や皿などの食器7点、鍋や包丁などの調理器具6点、洗剤やスポンジ、そして身分証明書や貴重品など、合計で88点です。これらのモノは、彼にとって一つでも欠けると困る、まさに「必要なモノ」です。生活必需品については、片付けの際に手元に残し、もし壊れたり使えなくなったりした場合は迷わず買い替えるべきだと彼は述べています。

一方で、「欲しいモノ」とは、たとえ持っていなくても日々の生活に大きな支障がないモノを指します。Takeru氏にとって、腕時計、ゲーム機、手帳、高価な財布などはこれに該当します。現在、彼はこれらのモノを持っていませんが、生活に不便を感じることはありません。このように、「必要」と「欲しい」を明確に区別する力が身につくことで、衝動的な購買が減り、本当に価値のあるモノにだけお金を使えるようになります。

結論:片付けがもたらす経済的なメリット

部屋の片付けとモノの整理は、単なる掃除や模様替え以上の効果をもたらします。不用品を売却して一時的な収入を得るだけでなく、自分にとって本当に必要なモノを見極める力を養い、無駄な出費を根本から削減することに繋がります。この「必要」と「欲しい」を区別する意識は、物欲をコントロールし、一つ一つのモノを大切に扱う姿勢を育てます。結果として、質の高いモノを長く愛用するようになり、短期的な満足のための消費が減り、自然と貯蓄が増えていくというサイクルが生まれます。ミニマリストの経験は、部屋の状態が私たちの消費行動、ひいては貯蓄額に大きく影響するという事実を明確に示しています。家計の改善を目指すなら、まずは身の回りのモノと向き合うことから始めてみてはいかがでしょうか。

参考文献

  • ミニマリスト Takeru 著『お金の増え方は9割部屋で決まる:人生を豊かにするミニマリスト思考』(ぱる出版)