米国で実施されたロイター/イプソス世論調査で、連邦最高裁判所が政治的に中立であるという見方に「同意しない」と回答した人が58%に上り、過半数を占めた。この米最高裁に関する世論調査は、同裁判所の中立性に対する国民の厳しい認識を浮き彫りにしている。「同意する」と答えたのはわずか20%にとどまり、残りは「分からない」または「回答しない」とした。特に民主党支持者の間では、「同意しない」が74%に達し、「同意する」はわずか10%だったことから、その傾向が顕著だった。
世論調査は6月11日と12日に実施され、米国の成人1136人が回答した。誤差の範囲はプラスマイナス3%ポイントである。
ワシントンD.C.にある連邦最高裁判所建物の外観。米最高裁の世論調査結果に関する記事に関連するイメージ。
背景:近年の主要判決
最高裁は近年、米国内で大きな議論を呼ぶ複数の論争的な判決を下している。例えば、女性の人工中絶の権利を憲法上の権利と認めた「ロー対ウェイド」判決を覆し、中絶の権利を後退させる一方、銃を所有する権利を拡大した。さらに、トランプ前大統領が2020年大統領選の結果を覆そうとしたとされる件に関する訴追において、在職中の公的な行為に対する免責特権を認める判断を示した。人種的な不平等を是正するための大学入試におけるアファーマティブアクションを認めず、連邦政府機関の広範な権限を抑制する傾向も見せている。現在の9人の判事のうち多数派の6人が保守派であり、そのうち3人はトランプ氏が大統領1期目に指名した判事である。これらの判決が、最高裁の政治的偏向に対する認識を高める背景にあると考えられる。
最高裁への好意的見方と人気低下
最高裁に対し好意的な見方を示した回答者は全体の44%にとどまった。党派別に見ると、共和党支持者では67%が好意的であるのに対し、民主党支持者ではわずか26%だったことから、党派による見方の大きな隔たりが浮き彫りになっている。
最高裁の人気は、2022年6月に「ロー対ウェイド」判決が覆されて以来、低下傾向にある。ロイター/イプソスが2021年終盤に実施した世論調査では最高裁に好意的とする回答が57%に達していたが、2022年6月下旬の調査では43%にまで低下していた。
今後注目の訴訟と関連世論調査
最高裁は今後数週間以内に、いくつかの重要な訴訟について判決を下す予定であり、これらの判断もまた世論に影響を与える可能性がある。注目される訴訟には、18歳未満の未成年者に対する性適合治療を禁じた南部テネシー州の州法の合法性に関するもの、そして米国で生まれた子供に自動的に米国籍を与える「出生地主義」の修正を示唆したトランプ氏の大統領令を巡るものが含まれる。
未成年者の性適合治療禁止法
未成年者が性自認に基づいて性適合治療を受けることを禁止する法律について、今回の調査では53%が「支持する」と回答した。これに対し、「反対する」は28%だった。共和党支持者では57%が支持、28%が反対であったのに対し、民主党支持者では支持が23%、反対が54%と、ここでも党派間で意見が分かれている。昨年12月の口頭弁論では、保守派判事たちがこの法律を支持する姿勢を示唆しており、最終的な判決は、トランスジェンダーを対象とする他の州法にも広範な影響を及ぼす可能性がある。
出生地主義の修正
トランプ氏が今年1月に出生地主義の修正を示唆する大統領令に署名した後、米国で生まれた全ての人に市民権を保障した合衆国憲法修正第14条に違反するとして、22州が訴訟を起こしている。今回の調査では、出生地主義の廃止に「反対する」との回答が過半数の52%を占め、「賛成する」はわずか24%だった。民主党支持者では84%が反対、5%が賛成であったのに対し、共和党支持者では43%が賛成、24%が反対と、党派によって見解が大きく異なる結果となった。
オンラインアダルトサイト年齢確認義務化
最高裁はさらに、オンラインでアダルトサイトにアクセスする際の年齢確認を義務付ける南部テキサス州法の合法性についても、今月中に判決を下す見通しだ。この問題に関する調査では、回答者の70%が法律を「支持する」と回答し、「反対する」はわずか14%だった。民主党支持者では65%が支持、18%が反対。共和党支持者では80%が支持、7%が反対と、これは比較的高い支持を得ている政策であることが示された。1月の口頭弁論では、判事らは未成年者のアダルトサイトへのアクセス阻止自体には同意しつつも、成人にとって保護されている閲覧行為に負担が生じる可能性に懸念を示していた。
ロイター/イプソスの世論調査結果は、連邦最高裁が政治的に中立であるという見方に対する国民の不信感、特に民主党支持者間のそれが根強いことを改めて浮き彫りにした。近年の人工中絶、銃所有権、前大統領の免責特権、アファーマティブアクションなど、米社会を二分する問題に関する判決、そして今後控える性適合治療や出生地主義、オンライン年齢確認といった重要訴訟への注目が高まる中で、最高裁の政治的立ち位置への疑問は今後も議論の中心となるだろう。