日本郵便は17日、運転手への不適切な点呼が横行した問題で、国土交通省から示された一般貨物自動車運送事業の許可取り消し処分を弁明せずに受け入れると発表した。同社の千田哲也社長は記者会見で謝罪し、事態収拾に向けた方針を説明した。
日本郵便の千田哲也社長が、不適切な点呼問題に関する記者会見で謝罪する様子
千田社長は同日午後、東京都内で開かれた記者会見で、「郵便・ゆうパックご利用のみなさまに多大なるご心配とご不安をおかけしましたことを、心よりおわび申し上げます」と述べ、深々と頭を下げた。
許可取り消しの影響と代替輸送
この許可取り消し処分が正式に決定すれば、同社が保有する約2500台の大型トラックやバンが5年間、使用できなくなる。これらの車両は、集配拠点間の輸送や都市部での大規模な荷物収集といった主要な物流を担っている。
日本郵便は、輸送能力の維持を図るため、影響を受ける業務の約58%を子会社の日本郵便輸送に加え、ヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸などの外部業者に委託する方針を示した。残りの約42%については、自社保有の軽貨物車などを活用して代替輸送を行うとしている。
一連の問題の責任を取り、千田社長と美並義人副社長の月額報酬を3カ月間にわたり40%減額する役員処分も併せて発表された。
不適切点呼問題の背景と調査結果
点呼問題は、日本郵便が4月に全国で行った調査で明らかになった。点呼が必要な約57万8千件のうち、規定項目を全て実施していなかったのが約12万6千件、記録簿に事実と異なる内容を記載した「不実記載」が約10万2千件に上っていたことが判明している。
軽トラックや二輪車への影響
なお、日本郵便は約3万2千台の軽トラックも保有しているが、軽貨物事業は許可制ではなく届け出制のため、今回の許可取り消し処分の直接対象ではない。しかし、軽トラックの点呼についても国土交通省による監査が継続されており、「不実記載」があった場合の罰則が、初違反でも車両使用停止60日と重い。貨物自動車運送事業法に基づく車両使用停止処分が、軽トラックにも一定程度影響を及ぼす可能性が指摘されている。
さらに、約8万3千台を保有するバイクなど二輪車についても、点呼の実施状況に関する社内調査が現在も進められている。
日本郵便は、運転手への不適切な点呼問題を巡る国土交通省からの厳しい処分を受け入れ、事業継続に向けた代替輸送体制の構築を進める方針だ。経営責任の明確化と並行し、軽トラックや二輪車を含む全車両の運行管理体制の適正化が喫緊の課題となっている。