イランの報復攻撃が激化、イスラエルの防空網を突破するミサイル戦の行方

イスラエルへの攻撃が続く中、イランによる「報復」は一層激しさを増している。イランはこれまでに少なくとも8回のミサイル攻撃を実施し、世界有数の防空網を誇るイスラエル国内で多くの死傷者を出している。特に直近の攻撃では、最新鋭のミサイルが使用された可能性も指摘されており、今後の展開に注目が集まっている。イランは現在、どれだけのミサイル戦力を保持しているのだろうか。

夜空に輝くイランのミサイル、イスラエル(エルサレム)上空にて(2025年6月15日、AP通信撮影)夜空に輝くイランのミサイル、イスラエル(エルサレム)上空にて(2025年6月15日、AP通信撮影)

最新の攻撃とイランの主張

イランの精鋭部隊である革命防衛隊は、6月16日朝に実施した第8波の攻撃を「これまでよりも破壊的な作戦」と位置づけ、命中精度を高めるための「新たな方法」を用いたと発表した。この大規模攻撃では、イスラエル中部にある住宅地などが標的となり、少なくとも8人の死亡者を含む被害が発生した。一部のイランメディアは、この攻撃で国産の極超音速ミサイル「ファタ」(Fattah)が使用された可能性を報じている。

イランのミサイル保有数を巡る見方

イランのミサイル戦力については、複数の機関や関係者によって様々な分析が出されている。米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が6月13日に公表した分析レポートによると、イランが保有する弾道ミサイルは最大で3000発と見積もられている。ただし、そのすべてがイスラエルを射程に収めるわけではなく、射程内にあるのは全体の約3分の2程度とされる。

さらに、CSISの分析では、将来的な抑止力として一定数を温存する必要があることや、イスラエルによる攻撃で一部が破壊された可能性を考慮すると、イランが報復攻撃に使用できるミサイルは「1000発程度に留まる」と指摘されている。

一方、イスラエル側の推定はやや異なる。地元メディアによると、イスラエル軍はイランのミサイル保有数を約1500発と推定している。また、ツァヒ・ハネグビ国家安全保障顧問は16日、イランはなお「数千発の弾道ミサイルを保有している」と強調した。さらに、ベンヤミン・ネタニヤフ首相も13日の声明で、「イランは3年間で1万発のミサイルを製造する能力がある」と述べ、イランの生産能力についても懸念を示唆している。

イスラエル側の発表によれば、イランは6月16日昼の時点で、既に370発以上の弾道ミサイルを発射しており、そのうち少なくとも30発がイスラエル領内に着弾した。これは、イスラエルの防空システムによる迎撃率が約9割に上ることを示している。

イスラエルの迎撃能力と今後の展望

イラン情勢に詳しいレバノンの専門家、カレド・アルハッジ氏は、現在の発射ペースであれば、イランは2週間以上にわたり攻撃を継続することが可能だと予測している。

その上で、アルハッジ氏は今後のイランの戦略について二つの選択肢があると分析する。一つは、発射数を増やしてイスラエルの強固な防空網をかいくぐる可能性を高めるために、限定的な規模で攻撃の波を繰り返し、継続的に圧力をかけ続ける方法。もう一つは、短期間で多数のミサイルを一斉に発射し、防空システムを飽和状態に陥れる大規模攻撃に出る方法だ。アルハッジ氏は現在の状況を「エスカレーションの段階」と見ており、イランは有利な立場で(停戦)交渉に臨むために、今後も攻撃を継続する可能性が高いとの見方を示している。

結論

イランによるイスラエルへのミサイル攻撃は、最新の技術を用いた大規模攻撃を含め、その激しさを増している。イランのミサイル保有数については異なる推定が存在するものの、専門家の分析は、イランがなお相当数のミサイルを保持しており、現在のペースで攻撃を継続する能力を有していることを示唆している。イスラエルの高い迎撃能力が示される一方で、イランがどのような戦略で攻撃を続けるか、そしてこのエスカレーションがどのように終息に向かうかが今後の焦点となる。

出典: Yahoo!ニュース (毎日新聞)