小泉進次郎農水相の「農機リース」発言、なぜ波紋? 経団連との懇談で飛び出した提案と農家の反応

6月17日、小泉進次郎農林水産相(44)は経団連との懇談会を開催し、農業の発展に向けた議論を行い、今後の課題検討で合意した。懇談後の会見で小泉農水相は成果を意気揚々と報告したが、その中で飛び出したある発言が波紋を呼んでいる。

農水相と経団連の会談は10年ぶりに開催されたという。終了後の囲み取材に応じた小泉農水相によると、企業による農業参入促進のための農地の大規模化・集約化、コメ流通の可視化を含むデジタル技術活用、スマート農業機械の開発など、農業の効率化につながる課題を検討することで合意したと述べた。

小泉進次郎農水相が経団連役員と握手する様子。農業改革に関する懇談会にて。

経団連との意見交換に「意義があった」と語った小泉農水相は、「今日は役員の皆さんの中には、建設関係の皆さんもおいでで」と言及。続けて、「今日、私からも持ち出させていただいた議題の1つというのは農業機械も含めて、この”高い”と言われる農業機械だけども、むしろ例えばコンバインが今、2000万円で」と、高額な農業機械の話題を切り出した。

高額農機への疑問と建設業界との比較

小泉農水相は、米農家が2000万円もするコンバインを「1年のうち1カ月しか使わない」と指摘し、農業機械の年間使用期間が短いことを挙げ、「だとしたら普通、買えますか?」と、個人で購入することの必要性に疑問を呈した。

さらに、「むしろそれだったら、買うんではなくてレンタルやリース、こういったことがサービスとして当たり前の農業界に変えていかなきゃいけないんです」と主張。この点について、「今、建設業界を見ると、重機や建機のレンタルやリースって当たり前ですよね」と、意見交換した建設業界を比較対象に挙げた。

「どこの中小企業の建設業界の皆さんが、例えばある1つの事業や案件にしか使わない数千万、数億の機械を全部持ってるかといったら、そんな形になってないわけで」と述べ、農業界も同様に「本来であれば個人個人で持っていたら、どう考えたって経済的にペイしないのに買ってしまってる。そして売ってる。私はこういったことも変えなきゃいけないと思ってるんです」と、農業における機械導入慣行の改革を訴えた。

建設業界を引き合いにした提案への波紋

小泉農水相は最後に、「なので、今日はそんなこともお話しさせていただいて、この建設業界で当たり前に根付いているリースやレンタル、こういったことも農業界に入れていきたい、そんな思いから大変前向きな意見交換ができました」と締めくくった。

しかし、この農業機械のリース・レンタルを推進するという提案に対し、業界関係者や農家、そしてSNSユーザーから疑問や反発の声が相次いでいる。

業界紙記者は、「実際、農業機械のレンタルやリースはありますし、共同購入するケースもあります」と前置きしつつ、「しかし、建築業界と違い、農業では同じ地域では収穫時期も重なるため、需要は集中します。農家だってリースやレンタルで生産コストを下げられるならすでに採用しているでしょうが、現実はそうなっていません」と指摘する。その背景を無視して建設業界と単純比較し、「普通、買えますか?」「どう考えたってペイしないのに」などと発言したことに対して、「実現性も含め疑問の声が上がるのも無理はないと思います」と語った。

SNSでの厳しい反応

小泉農水相の農業機械リース提案をめぐっては、SNS上でも批判的な意見が多く見られる。

「使う時期はみんな同じ 使わない時期もみんな同じ レンタル会社作る方が大変なんじゃないかな」
「もしかして:「リース取引」を「自分が使う時だけ借りられる取引」のことだと勘違いしてません?農繁期はいっせいに訪れるのに、そう都合よくレンタルできるもんなんかいな?」
「リースやレンタル、シェアで間に合うなら既にやってるんだよなぁ…やっぱ小泉進次郎って何も知らないド素人だわ。誰だよコイツ農相にしたの」
「農業を建設業界と一緒にするな。ブチギレそうです。農家が2000千万する機械を買ってペイ出来る金額まで持っていくのがあんたの仕事やろ」
「分かってるのよ、そんな事は。誰だって考えつくような合理化はとっくに検討し終わってるのよ。どうしてあらゆる事業者がそれでもコンバインの導入に踏み切るのか、そこをじっくりと考えてみて貰えませんかね?農家はバカじゃないし、逆にリースを思いついたって全然賢くなんかない」

これらの声は、農業の現場特有の事情や、すでに農家がコスト削減のために様々な工夫を行っている現実を踏まえない発言であるとの受け止めが広がっていることを示唆している。

まとめ

小泉進次郎農水相が経団連との懇談で提起した農業機械のリース・レンタル推進論は、高額な機械コストという農家の課題解決につながる可能性を秘めている。しかし、農業独特の季節性による需要集中や、すでに現場で検討・実施されている取り組みとの乖離を指摘する声が多く上がっており、単純な異業種比較による提案の“現実離れ”を問う波紋が広がっている。実現できれば農家の負担軽減につながるかもしれないが、果たして”理想”通りにいくのか、今後の具体的な検討が待たれる。

参照元

https://news.yahoo.co.jp/articles/006c403a2f4e8236792447ef4812424302f70d9e